#28 圧倒的存在感の昼飯を
「きゃっ……」
「明るっ……!太陽……?地下に?」
レイちゃんと眼帯マントが新鮮な反応を返す。やっぱりアレ、みんな最初はびっくりするよな。
「はぁ~っ、ゴブリンの集落ってこんななってるんですねぇ~!」
「魔石……その中でも純度の高い『白陽石』の結晶に、魔術的な処理をしたものっすねー。あれを使って、地下では農耕や牧畜をしてるわけっす」
「いやぁ、快く撮影を許可していただいた、シャーマン首長の方に感謝ですね!こんな映像、なかなか見れませんよ!」
「入場径路までは教えられないってことですが、まあ個人的に仲良くなったら入れてもらえるかもです。……狼藉働いたら、リンチされて地上送還でしょうけど」
「やっぱり、ダンジョンは暴力より文明的に攻略していかないとですね!」
「招かれても無いのに、私有地に入っちゃダメっすよ」
「ははは」
「ははは」
> どの口でw
> 不法侵入者×ショットガン男
> 肩組むなw
> いや、もっと組め。密着しろ。
> おっさん二人のBLとか需要ねぇよw
> あるわボケ。知った口聞く前に調べろ。
> ニワカ乙。ナマモノは隠れてやれ
「……じゃ、ここで案件タイムでーすw」
> ……ん?
「運動公園ダンジョンは、これから市の運営するスポーツ施設として再開発をするってことでしたよね。そこで、攻略径路にゴブリンの方の出店の支援がされるらしいんですよ!珍しいゴブリン文化の工芸品やスクロール、現地料理の屋台、お土産なんかも販売するらしいんです!そこで、取材も兼ねて、出店予定の皆様を紹介していきまーす」
> ……あ、この配信[PR]って入ってる
> 守 銭 奴 土 竜
> 魔石払い?なんぼ貰ってるん?
> なんかコンセプトとっ散らかってるな…PvP特化じゃないの?
> 新参乙。出たとこモグラの配信に芯のあるコンセプトなどない
> わかるマン
> 餓死RTA復活希望
> それは要らんw >餓死RTA
* * *
俺は、レイちゃんと眼帯マントを引き連れて、ゴブリン食堂にやってきた。目的は昼飯だ。いくら急ぎとは言え、腹が減ってフラフラになりながら最下層までたどり着ける保証はない。……まず、安全に栄養を取る手段を確保すること。これがダンジョン攻略の基本だ。
「俺はスピード特化なんで、山神家ダンジョンでは最深部まで猛ダッシュで駆け抜けましたね。飯は携行栄養バーです」
「若さだなぁ……。まあ、若いうちは無茶できるけど……飯はしっかり食っとけよ?オッサンになったら、油物も沢山は食えなくなってくるんだから」
「そうなの?カズヒロさん」
「うん、十年前は唐揚げやとんかつバリバリ食ってたけど……最近は一人前で胃もたれするなぁ……。さっぱりした焼き魚とかの方がうまく感じるようになってきたよ」
「哀愁を感じますね……」
「いずれお前も行く道だよ……」
さて、MOGURAの奴も、案件紹介にカタがついたらこちらに合流するだろう。奴の配信を見て、ハル坊から奴にDMを送る流れになっている。確かこの食堂は地下魚の定食もあったはず。若いこいつらが元気に食ってる所を肴に、飯を掻っ込むとしようか。
* * *
「こちら、ダンジョンマダライノシシのソテー、ピクルストッピングです!うっひょ~~~~~~!」
着席早々、MOGURAの賑やかな飯レポ配信が始まった。声デカいな。俺たち襲撃した時と同じぐらいの声量ないか?前世で飯レポ配信とかでもやってたのか?
「いやー、地上の豚とは違い、野趣あふれる味わいと言いますか……地上の猪ジビエとはまた違ったクセがありますね!ある意味では、食べ手の技術が試される味かもしれません!」
……食べ手の技術ってなんだよ。ステータスウィンドウででも表示されんのか?……「ナメクジ」とか言い出すナツオさんは間違いなくマイナスだな。
「あっ……このピクルスうまいっすね。地上に持ち帰ってコメで食いたいなぁ……」
眼帯黒マントがパンと漬物をおかわりした。そういや、おふくろの漬物もうまいうまいっておかわりしてたな。見た目は中学生好みの延長のくせに、こういう所は庶民派日本人って感じなんだよな。
……こうして見ると、こいつら大概キャラが濃いんだよな。並んで飯食ってると落ち着かんし、地元ゴブリン達もめっちゃジロジロ見るじゃん。人間が少ないってのはあるんだろうけどさぁ……あんまり、好奇の目で見られてぇわけでも無いんだ。もう少し、落ち着いた振舞して欲しいもんだぜ、
「……ほら。レイ……LEAちゃん。魚切り分けたよ。骨とかには注意して食べな。スープも熱かったら慌てて飲む必要ないからな。ゆっくりよく噛んで食べるんだよ。必要だったら女将さんからナプキン貰ってくるから、遠慮なく言うんだよ」
「………………」
「………………」
……なんだよ、その面は。お前らとレイちゃんを、同じ扱いなんてするわけねぇだろうが。
> 過保護すぎるw
> 甘やかしおじさんw
> 骨ぐらい自分で取れるわw
> 声が半オクターブぐらい高いw
> 男じゃなくてLEAちゃんの素顔食レポ映せや
誰が映させるかよ。見せモンじゃねぇぞ。
* * *
「いやぁ~、ゴブリン村落の人たち、良い人たちでしたね~」
「飯もうまかったですね。今度、ピクルスも瓶で買って帰りたいです」
> 素が出てんぞw
> 漬け物大好き†漆黒葬刃†
> おばあちゃんっ子かな?
さて、第二層のゴブリン村落で食事と物資調達を済ませた俺たちは、設置したマーカーに飛び、徒歩での移動を再開した。次のポータルの圏内まではまだ距離があるので、しばしの歩き旅だ。マーカー数もすべてを繋ぐには足りなかったので、村落間で距離がある要所要所ではこうなりがちだ。
「私も……ゴブリンは人間と、いさかいばかり起こしてるって聞いてたので……皆さん穏やかで驚きました」
「フィクションや異世界旅行記とかの影響も大きいんでしょうねー。僕も実際会って話してみるまで半信半疑の所ありましたよ」
……レイちゃんはハッとした顔でマスクを押さえる。「自分の来た世界の話」として話しそうになってしまったようで、MOGURAがフォローを入れて話を逸らしたようだ。
……こういった辺りも気は抜けないな。あまりレイちゃんを抑圧したくはないが、それでもネットユーザーの耳目の集まる今回の旅では、話さぬが吉という所はあるかもしれない。
「……ま、ゴブリンにだって、良い奴と悪い奴はいますよ。問答無用で襲ってきて物品奪うのは、人間でもゴブリンでも、やべー奴です。大事なのは対話っすよ」
「KAZUさん、ゴブゴブ生配信では、ゴブリンと一緒に滅茶苦茶笑顔で配信者の頭を撃ち抜いてましたが?」
「そりゃ、オメーらが不法侵入したからだろうが……」
「……あちゃー、墓穴っ!……KAZUさんの寛大な心には頭が下がりますよ!」
「二度と地上に出てこれないように、深くに埋めておくべきだったなぁ……」
「そんな!もっと対話しましょうよ!人は解かり合えるはずです!」
「ハイハイ、続きは法廷で――」
俺たちがくだらない雑談をしながら歩いていたその時、一本道の右側の壁が、透けて、消えた――
そこに立っていたのは、ローブを纏った一人の男。その片手には絵巻。
「……疑似壁魔法かっ!」
俺とMOGURAは、レイちゃんを守るように前に出て、奴に向けて魔導猟銃を構える!
「――窃盗魔法」
俺と、MOGURAの手元から、ショットガンが消えた。
同時に、奴の手元のスクロールは消滅し、代わりに俺たちのショットガンが握られていた。
「油断したねぇ……配信者くん♪」
男は、無精ひげの生えた口元を歪ませながら、俺たちに下卑た笑みを投げかけた。
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