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【連載版】実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す  作者: CarasOhmi
【番外編/破】実家住みおじさん、隣町の運動公園に湧いたダンジョンで最下層一位到達を目指して義弟妹とRTAする
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#22 山神カズヒロ

 カズヒロは三人兄弟の長男だ。

 万人がそうとは言わないが、傾向として長男というのは、気丈で、家や兄弟への責任感が強い。そんな子に育ちがちなもんだ。子供の頃は我慢をすることが多いから忍耐力も付き、同時に年下の兄弟に囲まれることで、横暴で独善的な性格にもなる。


 カズヒロはそうした話の典型例のような子だった。口では下の弟妹に対して邪魔くさそうに文句を言いつつ、二人に度を越したいじわるをする子には、食って掛からずにいられない性格だった。

 そして、家族を傷つけられた時の喧嘩っ早さに反して、あの子は自分が傷つくことには無関心だった。……いや、理不尽なことには当然怒るし、喧嘩もするけどね。温厚なわけではない。……だが、相手に酌量の余地を見ると、拳を降ろし、水に流す。


 カズヒロにとっての優先順位は、家族が一番、善人が二番、自分が三番で、カスがそれ以下……という感じなのだ。


 世の中の大半は、善人でも悪人でもない。悪いことだけしかやらない人間はそういないし、善人も間違いを犯すことはある。だから、あの子は他人の過ちを見て、微かでも善意を見れば、それ以上は追及しなかった。けれど、それは「傷ついていない」ということではなかった。


 高校の頃、カズヒロはインターネットの掲示板で痛い目を見た。当時流行していた「裏サイト」での悪口に端を発し、SNSの地域コミュニティで、あることない事を吹聴され、晒し上げられたんだ。その下手人はハッキリとしないが、おおよそ昔、カズヒロをいじめようとして返り討ちにあった小僧どもと目星もついてる。

 あの子の持ってた「善性の欠片でも見られるなら、許してやろう」という気持ちは、完全に裏目に出たというわけだ。


 カズヒロは、弟妹の前では平気な顔をして、「下らねぇ奴らだぜ」と彼らを嘲笑って見せた。……だが、それは「傷ついていない」ということではない。サイトの書き込みを病的な頻度で更新したり、携帯を持つ手が震えていた所だって、私は見たことがある。

 それでも、なんてことはないと、傷を隠して気丈に振舞ってしまう、「習慣」が身についていたんだよ。


 結局、カズヒロは奨学金とアルバイトで、東京の大学に進学した。長男として父を疎んじていたというのは間違いなくあったとも思うが、やはり「地元に失望した」というあたりは、実際の所でもあったんだろう。

 卒業後は、プログラマーとして手に職をつけ東京で暮らしていた。私と旦那は、子供たちの巣立ちに一抹の寂しさを覚えつつも、安定した生活基盤を確立したあの子に安堵し、向こうでいい人を見つけて所帯でも持ってもらえれば、と気長に考えていたもんさ。


 ……だが、計算通りにいかないのも、また人生。

 旦那は病に倒れて入院した。誰よりも早く会いに来たのはあの子だ。「心配なんてしていない」と憎まれ口を叩いていたが、それでも行動が如実に物語っている。あの子は、父親が、心底から心配で飛んできたのだ。

 あの子は猪突猛進だが、バカというわけではない。結局のところ、あの子は薄々、あの人の三文芝居に気付いて、それに付き合っていただけだった。「天に蓋する嫌われ者」という、単純な構図で家庭を維持するのは、流石に無理があったのさ。


 あの子は、父親の病状が悪化すると、頻繁に顔を見せた。

 そして、不安げなあの人の顔を見て、帰る時には決まって言ったそうだ。


 ――「何も心配ない。俺に任せろ」と。


 ……あの人が、それで安心したか?言われた方としては、それは嬉しいだろうさ。長男が、遺して逝くことになる妻を支えてくれると言うんだ。頼もしく育った息子を見て、嬉しくない親がいるものかよ。

 だが、それを聞くたび、私も、旦那も、自責の念に駆られるばかりだった。

 ……当然だ。それは、まだ若いあの子を、老い先短い私たちのために、忌まわしい記憶の残るこの田舎に縛り付け、孤独に生きることを強要することだったんだから。


 懸念の通り、カズヒロは旦那の死から間を置かず、仕事を辞めて、この地に帰ってきた。家のネット回線を整備し、東京では必要ないと面倒くさがっていた自動車免許をさっさと取得した。そして、私を誘っての買い物や、地域の用事以外では、家の敷地を出ることもなく、ただ孤独に、辛気臭いこのババァと暮らしていたのさ。


 ……私は、アイツにしょっちゅう「結婚しろ」と言ってやった。カズヒロ自身、結婚願望があることは知っていたし、それを諦めて田舎に戻ったことも知っている。

 ……嫌われようが上等さ。干からびた嫌味な母親なんて木乃伊(ミイラ)にしてさ。さっさと東京に戻って婚活でもして、自分の幸せを掴めばいい。老いたババァのために好機を投げ捨てられたら、立つ瀬がないんだ、ってね。


 ……けれど、そんなことをできる人間じゃないんだよ。カズヒロ(あの子)は。その事に不甲斐なさと、安堵を感じてしまう自分に、まったく、失望を覚えるばかりだったよ。……私が死んだあと、あの子のそばには、誰も遺らないって、わかっているのにね。


 ……そして、泣きっ面には蜂が寄ってくるのが世の常というかね。……ご存じ、「ダンジョン騒動」さ。


 インターネットの群衆に嫌がらせを受けたカズヒロにとって、無責任な発信でプライバシーを暴かれる辛さは身に染みていた。その矛先が、この家で暮らす私にも向きかねないと知ったアイツは、もう、鬼のそれだったよ。


 ……ああ、私もインターネットは普通に使うよ?ババァって言っても平成を生きた女だしね。あの子の前では無知を装っているだけさ。

 ……そうじゃなきゃ、私が連中を「怖がってる」と思って、余計追い詰められただろうさ。

 まったく、怖い目にあったのは、自分自身のくせにね……。


 ともあれ、実家で倒れてる配信者どもが目を覚ましたら、その度正座させてお説教だ。……それでも、訴訟までは起こさないのが、アイツでもあったよ。地下(ダンジョン)では散弾銃で暴れまわれようが、結局地上じゃ甘さが抜けきらないというかね。


 ……それでも、アイツはやり遂げた。昔みたいにネットでからかわれてるにも関わらず、この家から「ダンジョン配信」って脅威を、完全に排除した。我が息子ながら天晴(あっぱれ)なヤツさ。




 そこからは……レイちゃんも、知っての通り――





最後まで読んでいただけた方は、下にスクロールして☆を入れて頂けますと幸いです。


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