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【連載版】実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す  作者: CarasOhmi
【番外編/破】実家住みおじさん、隣町の運動公園に湧いたダンジョンで最下層一位到達を目指して義弟妹とRTAする
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#17 ダーティー☆おにいちゃん

 俺たちは、第二層に到着した。ここは「ゴブリンの村」。ゴブリンの生息するダンジョンには往々にして見られる、広大な空間を利用した住居群だ。当たり前の話ではあるのだが、ゴブリンたちもダンジョンで霞を食っているわけではない。彼らにも生活空間はある。

 大体の場合は、魔石を使用して作り出した光球を太陽に見立て、農耕や温厚な家畜モンスターの牧畜が営まれている。そして、そうした魔法を活用した生活空間を構築可能なゴブリンのコミュニティには、優秀な「シャーマン」と呼ばれる長がいて、これが対人遮蔽結界を構築している。


「……のが、一般的っすけどね。自分らの場合、実家ダンジョンを経由してコネが出来たんで、こうやって迎え入れて貰ってる感じで。セーフティーゾーンになるので、めっちゃ助かってます」

「なるほど……持つべきものは協力者ですね」

 俺たちは、ゴブリン食堂でパンとスープを頬張る。外はそろそろ夜が明けるころだろう。十分な食料は持っているが、現地調達可能ならばここで食べておいた方が、後々の保険にもなる。携行食料だけだと気も滅入るしな。


「黄色と緑のバランスもいいわねぇ……」

「栄養価が地上の植物と同等かはわかりませんが……味はほとんど地上と同じですね。美味しいです」

 栄養士としての立場もあってか、当初は不安げだったカナコさんも、やはり空腹には勝てず、気付けば普通にもりもりと飯を食っている。……あっ、スープおかわりした。


「ベーコンが何の肉かわからないのは、ちょっと不安になるかなぁ……」

「『ダンジョンマダライノシシ』だったかな……豚の亜種みたいなもんだった気がするし、大丈夫じゃね?」

「それ、ゴブリンガルの翻訳だよね?地上の単語から類推して、それっぽい単語作ってるんじゃない?」

「実は『猪の形をしたナメクジ』とかだったら、最悪ですね……」

 ナツオさんは、ベーコンを眺めながら大真面目にそう言った。フタバの肘がわき腹に入る。

 ……これは、逆食レポだな。全員の飯を食う手が止まった。ナツオさん本人は大真面目なのが始末に負えない。


「す、すいません……」

「まあ……、大丈夫っすよ。俺、二ヶ月ダンジョン潜って、ゴブリン食堂で生活しましたけど、体調に影響ないですし」

 ナツオさんとカナコさんは驚いた顔で俺を見る。……そういや、その辺話してなかったか。


「……思えば、カズ兄が美味そうに食ってるから、自然に受け入れてたけど、健康面は色々考えなきゃではあったのかな」

「でも、見た所水源もちゃんと濾過浄水する施設あるし、清潔な屋内調理で、よく火も通してるから、食中毒とか寄生虫リスクとかはなさそう」

「ゴブリンは食べても平気だけど、人間にとっては毒の食べ物とかはないのかな……?」

「うーん……そういうのあったら、ダンジョン町興しで行政も、ゴブリンに屋台出させないんじゃねぇかな……」


 世の中、不確定なことは多い。気にし過ぎても気疲れしてしまうこともあるだろう。

 ……ただ、レイちゃんの一件にかたがついたら、俺も人間ドックでも予約して、しっかり調べてもらうことにしよう。


* * *


 俺たちは、ゴブリンの村落を出て、ダンジョン内の歩みを進める。

「……アンダーネットの掲示板見たけど、第三層以下では俺達以外の冒険者の目撃情報はねぇみたいだな」

「……そもそもなんですけど、『アンダーネット』ってなんなんですか?」

地下大魔網(アンダーネット)は、平たく言えば地下版のインターネットですね。魔力の伝播をモバイルデータ通信みたいに活用してるんです」

 カナコさんの疑問に、ナツオさんが解答する。流石は、魔導機械エンジニア。多分俺より詳しいと思う。


「ハルト君が使ってた魔導映板(マジカル・タブレット)や、懐中(マジカル)魔導通信具(ポケットwifi)なんかもこれだっけ」

「そっちは、魔力伝播を使った地上のインターネットアクセス端末だな。一応、アンダーネットからもVPN使って地上のインターネットにアクセスできるみたいな話は聞いたけど、俺は地上のキャリアの魔導通信具(ポケットwifi)使って通信するようにしてるな。アンダーネットはそれ専用に端末持ち込んでる」

 俺は手元のスマートフォンを見せる。秋葉原で買ってきた中古の魔導wifi対応端末に、ゴブリンの露店で売ってた地下用SIMカードを差し込んで使用している、アンダーネット専用端末だ。互換性のある通話アプリもあるので、これだけでも結構取り回しは良い。


「……そもそも、アンダーネットって誰が開発したものなんだろ?ゴブリン?」

「一般には、シャーマンがダンジョン間の通信や行き来を行うために開発した、通信・転移魔法をベースにしてるって言われてますね。各サービスは、ゴブリンエンジニアが開発してるらしいですが、もしかしたら地上の機器メーカーと提携してるのもあるかもです」

「ゴブゴブ生配信とかゴブリンガルとか、地味にアプリ開発も強いんすよね……地底版のビッグテックもあるのかも」

「こっちでも、SNSとか炎上とかあるのかなぁ……ゴブリン社会も、案外世知辛そう……」


* * *


 ――第六層に到着した。


 途中にあるゴブリンの村々には「移送の絵巻(ワープスクロール)」で移動するためのマーカーを設置してきた。これは俺たちが高速にダンジョン内を移動するためでもあるが、もうひとつ、ゴブリンたちの村の行き来を快適に、安全に行えるようにするための作業でもある。

 ダンジョンには危険なモンスターが数多く存在する。ゴブリンといった知的種族だけではなく、凶悪な野生生物の他、火を吐くドラゴン、狂暴なキマイラ、主を失った古代文明のゴーレムなど、対話交渉が不可能なものも多く存在している。その為、村々は相互の行き来が困難であり、荷物の輸送すらもままならない状況なのだ。


 そこで、俺たちの出番である。俺たちは、ポータル設置のためのマーカーを各村落に設置することを条件に、今回の『願望機(ホープジェム)』の使用を、各村落の長から取り付けたわけだ。

 かの願望機は、ゴブリンには使用できないということだが、それでもある種の神器のような扱いというわけで、無法の冒険者に使われるのは大層鼻持ちならないという。そんな冒険者を追っ払う役割を担うということで、好意的に受け入れてくれた村の長もいたが、そうは言ってもやはり疑いの目を向ける者もいた。なので、今回の村落間移動のポータル設置を、彼らの利益として交換条件に提示したことで、反対していた長も認めてくれるようになった、という流れだ。


「……究極、無断で入って無断で使うことはできないわけじゃないんですけどね。実家ダンジョンでは眼帯マントの若造がそれでしたし。……ただ、ゴブリン社会で信用を作っておけば、今後の探索を進めやすくする布石にはなるって感じです」

「なるほど、アンダーネット上のやり取りがあれば、ダンジョンの垣根を越えて信用が広がりますね」

「……ただ、ここでやった以上他のダンジョンでもマーカー設置業務を押し付けられそうよね」

「まあ、あまり手間な作業でもないし、探索の役にも立つから、そこはwin-winでいいんじゃねぇかな」




「…………あとさ、」

「?」

「今回は、地雷埋めながら歩いてるから……撤去するまで、ゴブリンが村の外を出歩くと、事故起こるんだよ……」

「ああ……」


 大分と悪辣な状況ではあるが、ゴブリンたちには「帰還の首飾り(エスケープチョーカー)」が、探索者には「帰還の指輪(エスケープリング)」があるので、文字通りに「致命的」な事態は起こらない。

 ……とはいえ、アイテムロストという弊害もあるのは事実なので、ゴブリン側にも迷惑と言えば迷惑だ。

 そのため、事前に「無法の探索者が出るので、外は出歩かないで」とシャーマンには伝えてある。俺の地雷設置の罪は、無法冒険者に被ってもらおう。


 それに、安全な移動手段をポータルでの移動に限定すれば、他の探索者が危険な地雷原を渡る間に、俺たちは安全な移動のアドバンテージをとれる。今回のような「競走」では、それが強く結果に表れるだろう。

 もう少し、穏健なやりようはあるのかもしれないが……今回ばかりは大事なあの子のための決死行(RTA)だ。多少ダーティーな手は使わせてもらうぜ。


「まあ、今回だけじゃなく、カズ兄はこういうダーティーな男なんだよ」

「ナツも、カナコちゃんも、あんまり心を許しちゃだめよ」

「はあ……」


 ……親族に悪評をばら撒かないでくれ。





最後まで読んでいただけた方は、下にスクロールして☆を入れて頂けますと幸いです。


☆:いま一歩

☆☆:最後まで読んだ

☆☆☆:悪くない

☆☆☆☆:良い

☆☆☆☆☆:最高!

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