#16 ダンジョン・マイン・スイーパー
「事前通達した通り、今回は既に丘坂市役所と協議してる。俺たちの活動について、市は黙認するが……一応留意事項もある」
俺は、銃を抱えて走りながら、全体に無線連絡を飛ばす。
「無許可冒険者は射撃して地上に送還して構わないが、ある程度条件付きだ。今から話すのを参考に、現場判断で頼む」
(1)丘坂市後援ダンジョン探索者の業務を妨害する者
(2)現地住民に危害を加える者
(3)ダンジョンに対して破壊行為を行う物
(4)魔石資源について、探索に必要となる範囲を超えた量を乱獲するもの
(5)丘坂市の指定の探索方針に従わない者
「おおよそこんな感じ。これに違反してる連中は、市からも許可されてるんでヘッドショットして構わんぞ」
「んー……俺たちの邪魔する冒険者、全員撃って問題ないってこと?」
ミツキの躊躇いがちな質問が飛ぶ。……こんな言葉、温厚なミツキの口から聞くとは思わんかったなぁ。時代の変化だ。
「……そこについては、市としてもあんまり苦情来て欲しくないからってことでさ。あんまり俺らが、恣意的解釈で運用すると、信用に影響するから避けたいな。明確な迷惑行為になる行動ベースってことで、(2)~(5)を運用する感じになると思う。HUDのカメラで証拠映像も残せるし」
「……それでも苦情は来るんじゃないかしら?」
「まあそうだけど、今回このダンジョンの浮上を市に伝えて、事前に対策本部のテント張らせたの俺らだろ?その時に、迷惑配信者防止のためのアドバイスってことでさ、入口の名簿に明記して貰ったんだよ」
「?」
「……『現地住民に危害を加えたり、丘坂市のダンジョンの資産の盗難や破壊をしないことに同意する』って文言」
ナツオさんが、合点の言ったという声で返答する。
「なるほど。それが(5)に該当するってことですね。証拠文言に署名も残ってるから、迷惑冒険者扱いされて文句言えないよ、っていう」
「そういうことっす。だから、基本的には平和的な奴はスルーして、ゴブリンいじめてたり、明確に喧嘩売ってくる奴だけを撃てばいい感じっすね。無意味に他の探索者と敵対してタイムロスするのも、良くないですし」
続いてミツキが無線を入れる。
「……この『ダンジョン破壊』って、実家ダンジョンの頑強さ考えれば無理じゃないかなぁ」
「それはまあそうだけど、これも先住ゴブリンの住居みたいな後発的に作られたものメインかな。市としては、運動公園のアトラクションとして開発したいって意図もあるみたいだし、ダンジョン自体を壊されたくないってのはあると思うけど」
「……ウチを思うと、住処を観光名所にされるのは気の毒って思うわね」
「まあ、その辺はゴブリンたちも、スポーツ探索者向けの商売しようみたいな感じで、結構したたかだったよ。アンダーネットの掲示板にも、『冒険者向けの店開いてゴブリンズドリームを目指すスレ』みたいなの立ってたし」
「商売人がたくましいのは、人間もゴブリンも変わらないのねぇ……」
フタバとハルトの通話を聞きながら、俺達はT字路に差し掛かった。事前にゴブリンの長から提供された地図で、このあたりの地理は把握済みだ。
「俺とフタバとカナコさんは左、ミツキとナツオさんは右で。害獣の巣の掃討してる内に、二人で謎掛けの解錠して、先への扉開けてくれ。合流したら先に進もう」
「了解~」
何かに気が付いたようなそぶりで、ナツオさんがこちらを振り返る。
「……他の探索者に進まれることは警戒しなくていいんですか?」
「えっと、ダンジョンって魔法陣から入るじゃないっすか。あれ、パーティーごとに別の地点に転送してるんすよ。後方からの合流は少ないんで、考慮に入れなくていいっす」
「なるほど」
「……ただ、ゼロではないんで、一応対策はしてますね」
「?」
* * *
「ハイ、どーも!ダンジョン掘り掘り、HIMIZU―TVでーす!今回は、ダンジョン配信やってこうってことでね!丘坂運動公園に湧いたダンジョンにやって来てまーす!チャンネル登録よろしくねー!」
俺の名前はHIMIZU……ちょっと前までゲーム配信メインだったけど、流行に合わせてダンジョン配信にも手を出すことにした、動画配信者だ!現実でもダンジョン攻略できるなんて、楽しい世界になったよな!
ただ、うちは健全運営なんでね!勝手に私有地に入ったり、迷惑行為は一切しない!今日は、市が名簿登録する形で探索を許可してるっていう、中々珍しいダンジョンを見つけてきたんだ!
これで俺も一発当てて、配信者ドリームを目指していくぜ!チャンネル登録者百万人!運営に金の盾をもらうんだ!
さて、剣と盾も持った!「帰還の指輪」もOK!
「……あっ、視聴者のみんなに説明必要だよね。エスケープリングってのは『安全脱出装置』ね?死ぬほどの怪我しても、これがあれば地上に戻れるの。ダンジョン探索の必須品で、入り口の魔法陣もこれがないと発動しないんだ。探索中は外すことも出来ないよ。これさえあれば、モンスターの出てくるダンジョン探索も安全安心ってわけ。まあ、強制帰還すると、持ってたマジックアイテムはロストしちゃうけどね!今日のために揃えた剣や盾もタダじゃないし、探索は慎重に進めていくよー!」
おっ、コメントついてる!
> 即死すんなよww
> パンツもマジックアイテムにして全裸帰還しようぜww
> 丘坂市って『モグラ殺し』のダンジョンのすぐ近くwwヘッショ期待www
……おいおい、装備の準備配信にだって一枠使ったんだよ?
これで死んだら、完全にマヌケじゃん!そういう撮れ高は要らないんだよ!
大体、モグラ殺しの件ってMOGURAさんの不法侵入が原因って話だろ?その点、俺は大丈夫!
……さあ、行くぜ!リスナーのみんな!
俺の初めてのダンジョン配信……伝説の始まりだ!期待してくれよな!
――――――かちり
* * *
――後方から爆音が響く。
「……あー、運ねぇなぁ。初手で、こっち来ちゃった奴いたのかぁ」
「カズヒロさん、今のは?」
「……魔導地雷っすね。他のパーティーに先進まれないように、俺らの進行経路に敷設してきます」
「えぇ……」
「カズ兄、さっきは『無害な探索者は無視』するって……」
「そうは言っても、先行かれたら報酬が取られるし、準備も無駄になっちゃうしなぁ。……いや、探索が終わったら一斉起爆で撤去するよ?でもまあ、地雷なら、やられた方からも、俺らがやったってバレないし、ロストアイテムも回収して市役所に届けてやるから、まあ、大目に見てもらえないかなって……」
「相変わらずアンタ、人でなしねぇ……」
山神ダンジョンスイーパーの面々は、俺の行いにドン引きしていた。
……わかってる。でも、大切な家族のためだからね?あんまり、責めないでおくれよ。
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