#6 I wanna be a Pop Family
「……ってわけで、フタバとミツキは別の所で暮らしててね。普段の家には俺とおふくろがいる。困ったことがあったらいつでも話しかけてな。これから、フタバ達とお話しできる機械も用意するから、子供たちと話したくなった時や、おふくろや俺が鬱陶しくなったときは、いくらでもアイツに愚痴っていいよ」
「………………」
「……あっ、眼帯マントは別ね。アイツは、こう、ウチに迷惑かけたの捕まえて説教しただけで、家族じゃないの。まあ、話したくなったらハル坊かミツキに言ってもらえれば繋いでもらえるはずさ」
「……あの」
レイチェルさんが口を開いた。……いかん、一人でしゃべり過ぎたか?
……やっぱり、気まずさや後ろめたさもあってか、変に饒舌になって、一人で空回りしてしまってる所を感じるな。うーん……。
「どうしたの?」
「……その」
彼女は、かわいらしい肉球を、足の上でもじもじさせていた。俺も人並みに猫は好きなので(猫耳キャラと同じ枠ではないぞ)、ネットの猫動画を見た気分でつい頬がほころぶ。……いかん、キモい表情になってるかもしれん。慌てて、口元を手で隠した。
「どうして……、皆さん、私にそんなに、良くしてくれるんですか?私、まだ、会ったばかりなのに……」
「………………」
「私……みんなの家族じゃ……ないのに……」
……「どうして」、か。
包み隠さない、俺個人の気持ちとしては「罪悪感」もある。当然だ。
けれど、それだけでないのも、また確かだ。フタバやミツキは、レイチェルさんの件に責任はない。だが、アイツらは進んでこの子を受け入れようと考えている。兄貴の俺の不始末だから、という点も無くはないが、それでも「責任」だけで考えるなら、レイチェルさんに世話を焼くことは、必ずしも「やらなければならないこと」ではない。
じゃあ何故か。なぜ、みんな、この子に優しくしたいと思ってしまうのか。
………………。
「理由は……、無いんじゃないかな?」
「えっ……?」
レイチェルさんは、意外そうに、俺の顔を見上げた。
「……産まれも、家族も、人生だって、神さまの振ったサイコロ遊びなんだよ。俺たち人間には、どうしようもないことの方が、きっと多いと思う。君が、この世界にやってきたのも、きっと、神さまが振ったダイスの目が、たまたま君だったって、それだけなんだよ」
「………………」
「俺たち家族も、たまたま同じ目が出て集まったプレイヤーでしかないんだ。けど、それでも……けっこう楽しく生きてきたと思う。……『あんなの』だけどね。だから、同じ目を出した君とも、同じように一緒に楽しく過ごしたいって、それだけさ」
「………………」
「だから、君が俺たちに気を使うことは無いんだよ。ロクでもない一家だし、どうしても合わないときは、無理して合わせなくたっていい。レイチェルさんのやりやすいように、一緒に楽しくやっていこうな?」
……これで、良いのか?
うーん……、自分でも何言ってるかわからないというか、こんなこと家族にも、いちいち言わないしなぁ。何かポエムっぽくなっちまった気がする。眼帯マントの中二病が移ったか?
……あっ、いかん、ちょっと顔赤くなってるかも。平常心、平常心。
「……家族じゃ、なくても?」
レイチェルさんは、おどおどと俺を見る。
「家族さ。……なろうぜ、家族に?」
「!!」
……あっ。
あっ、やべぇ。そういう意味じゃない。そういう意味じゃないんだ。……いや、弁明すると余計にそれっぽくなっちまう。ポーカーフェイス……あっ、無理だ。
もういいや、後ろ向いて誤魔化そ……。
「カズヒロさん……」
「……その、おふくろも、さ。年が離れた娘が出来たみたいで、はしゃいでるんだよ。鬱陶しいだろうし、全部付き合う必要ないけどさ、不愉快じゃなかったら、相手してやってくれると、俺も嬉しいよ。俺もさ、年の離れた兄弟はミツキ以来でさ……変に可愛がろうとして、空回りしちゃうかもだけど、その……」
「………………」
言葉が返って来ない。だが、恥ずかしくて振り返れん。
もう、勢い任せで押し切っちまおう。
「……これから、よろしくな、『レイちゃん』」
「……はい」
俺は元・ミツキの部屋の物置……改め、「レイちゃんの部屋」のふすまを閉めた。振り返った時、俺を見るレイちゃんの顔が、視界に入った。彼女は、穏やかに笑っていた……気がする。……うん、そう思うことにしよう。
彼女の部屋を出ると、壁にもたれかかって腕を組みながら、おふくろがこっちを見ていた。
……何ニヤニヤしてんだよ、妖怪ババァが。見せモンじゃねぇぞ。
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