墓さがし3
夢我「・・・お墓ですか?」
水島「ええ。お墓です。」
夢我「割と、怪談スポットとしてはメジャーですけど。数字取れるんですか? いくら夏の怪奇特集とはいえ、安易過ぎませんか?」
水島「まぁ。お墓で肝試しをするわけじゃないから、そこはそこ、・・・・それなりの噂のあるスポットなんですよ!」
火野「・・・・・アイドルの皆さんが、肝試しをやった方が絶対、数字、取れると思うけど?」
水島「火野さん。僕達は、超常現象専門の製作会社ですよ?他所がやらない企画で、ご飯を食べているんですから!」
火野「専門じゃぁ、ないけど。」
夢我「そうなんですか?」
火野「それはそうと夢我さんも大変ですね。このシーズンは、この手の企画、多いでしょうし。」
夢我「・・・・ええ。まあ。」
水島「正直、夢我さんを押さえるのだって大変だったんですからね。」
夢我「あ、いえ。こちらは以前から、お世話になっていますから。私の方も融通利かせて頂きます。心霊系は私の担当ですし。」
水島「もうお笑い芸人さんとアイドルさんは、取りっこですよ。」
火野「旬の芸人さんとアイドルさんは、それだけで、数字、取れますからね。・・・・旬って言っちゃって、申し訳ありませんけど。」
夢我「あ、いいんです、いいんです、アイドルなんてそんなに続けていられませんから。大手の、レコード会社所属のアイドルさんは、それこそ、十年以上、活躍されますけど、私達は、認知されてからじゃないとホントの活動にならないんで。」
火野「そりゃぁ小学生、中学生の頃からやっていれば、嫌でも、十年以上になりますもんね。」
夢我「ま、でも、そういう大きい事務所は、毎年、毎年、補充しているんで、ある程度の年齢になったら、トコロテン方式で卒業しなくちゃいけないから、その点では有利なんです。うちは好きなだけアイドル、やっていてOKなんで。大手事務所はドル箱の子以外、新しい子の方が、業界を知らない分、扱いやすいしお金になるし、どうしたって力の入れ方が変わってきますよ。」
火野「あの有名なピンクレディなんて、活動期間、たった二年だったそうですし。」
水島「それはもう、アイドルの宿命ですよ。」
火野「・・・・・なに語っているんですか、気持ち悪い・・・・・」
水島「気持ち悪いは余計ですよ。好きなアイドルが辞めちゃうと、なんだか、心にポカンと穴が開いたようになるんです。ロストですよ、ロスト。・・・・今のご時世、スキャンダルで辞めないだけいいのかなぁって思いますね。運営の悪口、言っただけで卒業させらちゃったりするんですよ?」
夢我「まぁ。アイドルの命を握っているのは事務所ですから。事務所の悪口を言ったら、当然、クビになるでしょうねぇ。」
水島「別に彼氏がいたとか、他のアイドルと付き合っていたとか、AV出演がバレたとか、そんなんじゃないのに。・・・・僕、やるせなくなるんですよね。辞めてもいいんですよ、芸能界を辞めなければ。それなのに、ばっさり、芸能界、辞めちゃう子、多くて。やるせないですよねぇ。」
夢我「変なゴタゴタに巻き込まれたら、辞めたくもなるんじゃないんですか?気持ちは理解できます、私も。」
火野「悪い噂、流されたりしますしね。権力を持っている、汚い大人のやり方ですよ。」
水島「実際、会ってみると、噂の通りの、ああ、分かるって人もいますけどね。」
火野「・・・・水島さんみたいなのが、そういう噂、流すんでしょ?」
水島「僕ぅ? 流しませんよ、そんな事! ・・・・正直な感想は言いますけど。悪口なんて言いません。それは絶対です。」
夢我「・・・・・・・・」
火野「夢我さん。この人は、絶対、流しますよ。」
水島「いやいやいや。僕、夢我さんには売れてもらいたいと思っていますし、それに、お世話になっているし、そこは、他の芸能人とは違いますよ。なによりしっかりしてるし。数字持ってるし。」
夢我「・・・・・ありがとうございます。その、ところでなんですけど、その、お寺?お墓? 許可はちゃんと取れているんですか?」
水島「あ! ああ、それはもちろんです。お墓は私有地ですから、許可が無ければ、撮影、出来ませんから。・・・・・動画と違って、アポなしで突撃、なんて、馬鹿な事、やりませんよ。」
夢我「それならいいんですけど。」
水島「あ、なんなら、別のお墓です。安全なお墓。」
夢我「安全なお墓?」
水島「ええ。・・・・うちが提携している、撮影用の、撮影に協力的なお寺があって、そこ、借りて、撮ります。だから安心して下さい。いわくとか一切ない、お寺です。」
夢我「え? あの、・・・・・じゃぁ、この企画書と、内容が違うって事ですか?」
水島「うん? ・・・・まぁ。そうですね。いや、ま、違くはないですけど。・・・・・お墓で撮影する。人が消える噂のあるお墓がある、っていう噂の紹介。別に、ここがそのお墓とは断言していませんからね?」
夢我「やらせって事ですか?」
火野「やらせって言うか、演出です。そもそも、そんな、ネットの噂にあるお墓がどこにあるのかも分からないし、あったとしても、取材できるかどうかもわからないし。まぉ、ですので、手近なお寺で、撮影するって話です。暗いから何処だか分からないし。」
水島「いわく付きのお墓って体裁で、夢我さんには、やっていただきますので。内容は、その、企画書の通りです。」
夢我「それぇ、視聴者に誤解を与えませんか?騙している事になりませんか?」
火野「ほら水島さん。これ、水島さんの通した企画でしょ?」
水島「騙しているって言うと、語弊があるじゃない、ですか? そういう、人が消えたっていう噂のお墓がある、っていう話を、お墓でするだけです。騙していません。噂話を安全なお墓で撮影するだけです。」
夢我「・・・・じゃぁ心霊現象とか、そういうのは、期待できないって事ですよね? 普通の、肝試しになっちゃいますけど?」
水島「ま、ま、ま、ま、ま。ま、そういう事にぃ?なっちゃうかなぁ?とは、思っていますけど。」
火野「肝試しにもならない可能性もありますけどね。」
夢我「はぁぁ。・・・・・・・・分かりました。一応、承知はしました。台本通りに。」
水島「でも、それなりに怖い演出は考えていますから。ただの肝試しで終わらないように。それにですよ、内容はその通りなので。ネットの噂。」
夢我「それ?本当なんですか? お墓で人がいなくなる、行方不明になるってやつ?」
火野「どこにでもある話ですよね」
夢我・水島「どこにでもは、無いでしょう?」
火野「そうですか?」
水島「悪霊が、人間を食べちゃうんですよ!」
夢我・火野「・・・・子供みたいな事、言わないで下さい。」
水島「だいたい人を襲う幽霊なんて悪霊に決まっているでしょ!」
夢我「まだ幽霊と決まったわけじゃないですけどね。」
水島「悪霊じゃなかったら、妖怪? 人間の仕業じゃない、何か。心霊現象、超常現象の何かが、人を行方不明にさせちゃうんだ。」
夢我「神隠し?って奴ですか」
水島「そうそう。神隠し、神隠し。お墓で神隠し。・・・・怖くない?」
夢我「それは怖いですよ。」
水島「噂だと、行ってはいけない墓地に行ってしまったとか、悪霊に憑りつかれてしまっただとか、違う世界に行ってしまったんだとか、」
火野「どれも信憑性は低いし、昔からあるありふれた怪談話ですよ。今更騒ぐ程の目新しいものではないから・・・・・・・たぶん、数字、取れないと思いますよ?」
水島「いや違うんだよ、火野さん。・・・・こういうド定番の話だからこそ、怖いんだ。一人、二人、いなくなった所で、そうそう騒ぎにならないと思うけど、」
夢我・火野「なりますって!」
水島「・・・・なるけども。なるけども、何人も、その墓場で消息を絶っている事件が起きている、らしいんだ。」
夢我「それ、もう、心霊体験とかじゃなくて、事件じゃないですか!」
水島「そう!事件なんだ。警察が捜索しても、見つからなかった、って、話なんだ。」
火野「結局、その情報だって、ネットの又聞きでしょう?」
水島「いや、当時の新聞に載っていたって、ネットに書いてあったよ。」
火野「・・・・・いや、だから水島さん。ソースがネットっていうのが一番、信用できない話なんですよ。いくら超常現象だとしても。」
夢我「私もそういうの、一番、注意してます。ネタ元がネットの場合、二転三転して、どこから出た話か定かでなくなるんですよ。噂っていうのが一番、タチが悪い。百歩譲って、作り話の方がまだ良いですよ。誰も傷つけていないから。下手すると、無名な小説だったりするんですよね。やらせよりパクリの方が致命的ですよ?ディレクターさん、その点、大丈夫なんですか?私、そういうものの片棒、担ぎたくないんで。」
水島「・・・・・・・・」
火野「夢我さんのおっしゃる通りですよ?」
水島「・・・・・・・ネットからの引用、って事で、逃げられないからな?僕達は悪くないって。」
夢我・火野「最低ですね。」
夢我「だったら、フィクションだと最初からクレジット、つけるべきです。私もその方が楽なんで。後から叩かれなくて済むし。」
火野「少なくとも、ちゃんと、ソース元を洗って、それからじゃないですか。まだ撮影まで日数、ありますし。」
水島「・・・・・・・・最悪、さぁ? ネットで話題の、行方不明事件がある!っていう感じで、やれないもんですかねぇ?最悪。」
火野「ネットの嘘か本当だか信憑性の欠片もない話をテレビで流すとか、テレビの意味ありませんよ?だからオールドメディアは終わってるとか、嫌味、言われるんですよ。」
水島「ね? ね? ね? 夢我さん?どう?このアイデア?」
夢我「私はあくまで出演者なんで。言われた通りにやりますが。嘘とかやらせは、後でバレますから。内容によっては、私の判断では返答できませんので、事務所に持ち帰らせていただきますね。」
火野「それまで水島さん。しっかり調べておいた方がいいですよ。撮影までに。」
水島「いや、もちろんだよ。もちろん。夢我さんの出演だからねぇ。」
夢我「でも、それはさておき。・・・・・薄気味悪い話ですよね。こういうの。人がいなくなっちゃうって。しかも、ある程度の、分別ある年齢の方ですよね?」
火野「行方不明や失踪っていう事件は、今現在もどこからしらで起きている事件なので、昔の話じゃぁないんですよね。そりゃぁ、今みたいに、防犯カメラも町中あるわけじゃないし、スマホが一人一台の時代じゃない。昭和の頃は、行方不明事件はセンセーショナルに報じられていましたから、記憶に残っている人が多いだけです。件数はそんなに変わらないみたいです。」
夢我「そうなんですね。」
火野「目にするメディアが限られていたから、余計、強烈に印象に残るんですよ。テレビとラジオ、週刊誌、新聞。それくらいしか、ニュースの情報源が無かった時代ですからね。」
水島「ほら、誘拐事件とか、殺されちゃったりとか、猟奇的な事件が多かったじゃない?昭和って。」
火野「まぁ。ベビーブームで人口が増えたし、集団就職で東京に出て来る人も多かったから、人が増えればおかしな人も増える、そういう事件が目立つだけだとは思うんですけどね。」
夢我「でも人がいなくなっちゃう事件の件数は今と、それほど、変わらないんでしょう? やっぱり昔は、変な事件が多かったのかしら?」
火野「警察の捜査手法も今とは格段に劣っているでしょうから、未解決にされちゃっている事件も多いんでしょうけども。それに事件には時効がありました。時効が来れば、打ち切り、ごめん。お蔵入り。・・・・私は、そっちの方が現実味があると思いますけど。」
水島「そうだねぇ。下手に、犯人をでっち上げられて、冤罪で、何十年も牢屋に入れられちゃうよりかは、まぁだ、見つかっていないだけ、冤罪になってなくて良い気もするね。」
火野「人が殺されたんならまだしも、行方不明の捜索に、警察が何人、人員を割けるかって考えたら、人探しは、まず、見つからないですよ。」
夢我「ああ、なるほどですね。それは言えてる。」
火野「人がいなくなるって、本当に、大変な労力なんですよ。誰にも見つからない。まず、不可能です。・・・・人間、生きていれば、食べる物を欲しくなりますし、眠らなくてもいけない。怪我をしたり病気にもなったりする。どんなに隠そうとしても、痕跡が残ってしまうんです。それが無いっていうのは、相当な事ですよ?」
夢我「それは、やっぱり、動物に食べられてしまったとか、そういう事?」
火野「その可能性もあるでしょうね。熊や猫科の動物は、エサを一旦、安全な場所に持って行って、ゆっくり食べると言いますから、人間がエサになってしまった場合、なかなか見つからないでしょうね。熊は木のウドのような穴状の場所で冬眠しますから、そういう所を探すのはさすがに骨が折れると思いますし。それに、山でも氷でも、地割れ、ひび割れ、間欠。そういった自然の落とし穴に、うっかり落ちてしまえば、まず、見つからないと考えて良いでしょう。それに、海も同様。引き潮に足を持っていかれれば、最悪、海の下の方に流れる海流に運ばれ、二度と、浮かび上がってくる事はないでしょう。」
水島「そんな事はないんじゃないの?」
火野「深海に持っていかれれば、肉はまず魚に食べられてしまうし、海流は、世界中、回遊しているので、一度、深海に引きずり込まれると向こう、十年は同じ、場所に戻ってくることはありません。骨のまま世界中をぐるぐる旅していればいいですけど、そのうち、その骨も、砕けてなくなってしまいます。海で死んだから、自然が、綺麗に、自然に返してくれるんですよ。」
夢我「・・・・・ディレクターさん。うまいこと、言わないでいいから・・・・・」
火野「殺すにしたって、生かすにしたって、痕跡を残さずに人を消すっていうのは、なかなか出来る事じゃぁないんです。」
水島「それじゃやっぱり、超常現象じゃない。やっぱり、そうだ。・・・・悪霊が、人間をさらってしまったんだ!」
夢我「・・・またそれですか?」
水島「だってそれ以外考えられないじゃない。」
火野「まず水島さん。まず行方不明になる人間がいて、その、お墓だか墓地が原因の行方不明がどれくらいいるのか、そう論理立てて考えないと、母数がおかしいですし、偏在が著しいですよ。」
夢我「ああ、そうですね。」
火野「行方不明になっても見つかる事例もあるし、だいたいは、高齢者の認知症。勝手にどっかに行っちゃうから、捜索願を出さざるを得ない。完全に、ピンポイントでそのお墓が原因で、いなくなった人間がいるのか、それが分からないと、・・・・何とも言えませんね。」
夢我「意外といなかったりするんですよね。ただの噂で。」
水島「ほら。火のない所に、噂は立たないって言うじゃない?」
火野「煙は立たないです。」
夢我「・・・・・そもそもですよ。そんな噂が立つお墓に、入りたいと思います? 不動産屋さんだって、困りますよ?お墓が売れないんじゃ商売にならないじゃないですか。私だったら、変な噂を消すのに躍起になると思いますけど。お墓って安い買い物じゃないですよね?よく知りませんけど。」
水島「・・・・・おっしゃる通り。だと思います。」
夢我「私、一応、超常現象とかの担当なので、そういう番組、呼ばれますが、だからと言って、完全肯定派じゃないんですよ。こういうカッコしているから、頭のネジが飛んでるバカな女って見えているかも知れませんがぁ、・・・・・そこは否定して下さいよ。アイドルなんですから。」
水島「・・・・・・」
夢我「私、子供だましは見抜けますからね。いろいろ考えた結果、どうしても説明できない問題だけ、肯定しているんです。あの、こういう業界だから、昔はニッチでしたけど、今は超常現象もメジャー化しちゃいましたから、乗っかるタレントが多いんです。わーきゃー言っていればいいんですし、これみたいなネットの書き込みをそのまま言って、脅かしていればいいんですから。でもねぇ・・・・・それじゃぁ、オカルト産業も衰退化しますよ。食い散らかしているだけ。いずれ飽きられますよ?」
水島「夢我さんのおっしゃる通りです。」
夢我「だから、ホンモノの、意味不明な理解不明なネタじゃないと、視聴者は喰いつかないと思います。だから、やらせは嫌なんですよ。違う意味で。あ、別に、年齢ごまかすとか、台本があるとか、そういうのは全然いいんですけど、ネタに関しては創作入いっちゃうと、見ている人、分かりますからね。」
火野「時々、本物が入っちゃうから余計、困っちゃうんですよね。」
水島・夢我「本物?」
火野「ええ。本物。本物の、心霊現象・・・・・」
水島「そりゃぁ、全部、偽物だったら作る方も大変だから、本物も入っているでしょう?」
火野「水島さん。そんな軽い話じゃないんですよ。昭和の緩いテレビだって、最低限の放送倫理がありましたよね?なんでもかんでも映していい訳じゃない。今は厳しいから個人を特定できるものはまず映せない。モザイクばっかり。それはそれで違和感を感じますが。緩い時代でも、映せなかったのは事件、事故の現場。」
水島「死体まずダメだよね。あの時代でも。」
火野「視聴者から送られてくるVTRを精査して、テレビに耐えられるのかチェックするのが私達の仕事じゃないですか。まぁ、つまらないものを弾くのがそのほとんどですけど。同時に、放送倫理に反する、殺人の瞬間だったり、死ぬ瞬間。死体。ああ、動物の死骸なんかも、生々しかったら映せませんからね。ただ、チェックしても映っちゃうものがあるんですよ。事故映像とか放送事故とか後で言われちゃうんですけどね。それが人間だなんて、分からないじゃないですか?」
夢我「人間?」
火野「ええ。バラバラになった人間。肉片?って言うんですか?そういうの。人間の格好をしていなからチェックで漏れちゃうんですよ。」
夢我「肉片って嫌ですね」
火野「人間がバラバラになるなんて、相応の力が加わらない限り無理なんで、おおよそ飛行機事故か電車事故と相場が決まっていますが、殺人事件でバラバラにされたり、害獣に襲われて食べられてしまう事ももちろんあります。そんな中、どう考えても、そこにあるのがおかしいっていうのが、いわゆる本物。・・・・事件でも事故でも、それこそ心霊現象でも何でも理由はいいんですけど、映っちゃいけないものが映っているのが問題なんです。」
夢我「でも・・・・ディレクターさん。肉片って言っても、人間とは限らないですよね?」
火野「ええ。その通りです。でも、動物と人間は明らかに違うじゃないですか?動物は毛がありあますが、人間には毛がない。」
夢我「おお、なるほど。勉強になります。そうですね、人間は体毛が薄い動物ですもんね。」
火野「さて。その人がいなくなった墓地が、本物かどうかですよね。」
水島「人が死んでいるか、どうかって事ですか?」
火野「いや、そうではなく。人がいなくなったっていう話だけじゃぁ、何の説得力も無いって事ですよ。」
夢我「もう単純に、お墓で肝試しの方が、下手な怪談話で垢が付いていない分、見ている人も、楽しめる気がしますね。」
水島「・・・・・・・えぇぇ。」
夢我「念を押しますが、クレジット出しておいて下さいね。これはフィクションだって。」
エグたん「・・・人がいなくなるっていうのは怪談話のド定番でエグ。学校で、トイレに行って、それっきり帰って来ないって話、有名でエグ。」
夢我「トイレの花子さんね。」
エグたん「花子さんがブームになった二千年代初頭、学校でおしっこを我慢して、気分が悪くなるっていう、嘘っぽい本当の話があったエグ。学校でおしっこを我慢して、病気になちゃぁダメエグ。」
夢我「そんな馬鹿なって笑うかも知れないけど、膀胱炎になっちゃった、最悪、入院しないといけないって話もあったから、笑い事じゃ済まされないのよ。」
エグたん「教育委員会も学校のトレイを使うよう、指導したっていう話もあるエグ。あ、おはスタでも、トイレに行くようキャンペーンしてたエグね。それほど、学校の怪談、学校の七不思議っていうのが、日本中、ブームになったってことエグ。」
夢我「女の子は、男子と違って尿道が短いから、膀胱炎になりやすいのよ。
・・・・嘘か本当か分からないけど、人づてに、人がいなくなるって話は、よく聞くわね。そうそう。深夜のエレベーターとか。・・・・エレベーターには隠しコマンドがあって、そのコマンドを入力すると、秘密の階でエレベーターが止まる。その後の消息が不明になる、とか。やっぱりキッズ達がこぞって、その秘密のコマンドをエレベーターに乗る度に、押して、大問題になったわね。」
エグたん「・・・・エレベーターの会社の人が使う、保守点検用のコマンドを使われてしまって、実際に、エレベーターが動かなくなるトラブルもあったみたいエグ。」
夢我「そのエレベーター、どこに繋がっているのかしら? 秘密基地?地下帝国?それとも、黄泉の国?」
エグたん「えぇぇ?エレベーターが天国と繋がっているエグか?」
夢我「黄泉の国っていうのは天国とは限らないわ。死んじゃった人が行く所だもの。天国とも地獄とも言えない、死者の国。」
エグたん「死んじゃった人が行くところエグかぁ。」
夢我「イザナギが、死んじゃった奥さん。イザナミを連れて来たことでも有名よね? でも連れて来たはいいけど、あまりの醜さに、生前の面影が無く、二度と会う事がなかったっていうんだから、失礼な話よね?自分で呼びに来ておいて、顔がブサイクだったから、お前とは二度と会わないって。いい加減にしろ!って思わない?私だったら怒り心頭よ!」
エグたん「イナザミも実際、怒り狂ったみたいエグけどな。」
夢我「どうして、人がいなくなっちゃう、そういう話、飽きずに連綿と続いているんだろう?って、エグたん、思わない?」
エグたん「エグたんは何も思わないエグ」
夢我「あ、そう。」
エグたん「興味ないエグし。誰が消えようと、おかまいなし~エグ。」
夢我「エグたんは薄情ねぇ。」
エグたん「夢我、いいエグか? こういう怪談話って、人が消えた、怖~い!で、だいたい話は終了エグ。その消えた人間を捜索したり、謎を解明したり、なんて、まずしないエグ。み~んなみんな薄情エグ。怖いって言って終わりエグ。」
夢我「人を探すって、意外に労力がかかるし、それに、人が消えたらそれは警察のお仕事だしね。」
エグたん「そうエグ。警察に通報してお終いエグ。」
夢我「人が消える噂や怪談話は絶えずにあるけど、中にはいわく付きの墓地。そういうのがあるだって。何人か、人がいなくなっちゃったって有名な墓地よ。」
エグたん「・・・・まぁまぁ。夢我。あんまり、お墓で馬鹿な話をするのは、関心しないエグ。ただでさえ私有地で、お墓は全部、人の財産エグ。それじゃなくても、死んでいる人が眠っている所で、話す話じゃないと思うエグ。不謹慎エグ。」
夢我「あらエグたんは常識人なのね。見直したわ。」
エグたん「エグたんは法律に触れる事はしないエグ。」
夢我「別に、お墓で人が消えたって噂があるだけで、落書きや破壊が目的じゃないし。そんな事をしたら器物破損で御用よ?・・・・・噂を確かめるだけよ。」
エグたん「・・・・・夢我。こういう不動産は、変な噂が立つだけで、資産価値が下がるエグ。夢我が話しているだけでマイナスアピールにしかならないエグ。訴えられるエグよ?」
夢我「大丈夫よ? ちゃんとモザイクかけているから。もう、ここがどこか分からないように。一回、ちょっとだけ、モザイク、外してみる? あ、ダメだって。スタッフさんが。ほら、怒ってる。」
エグたん「別の意味で不謹慎な映像になっているってことエグな。ほら、家についていく、あの番組。あれも最近、コンプライアンスがうるさくて、住宅地はモザイク処理エグ。いかがわしい想像しちゃうエグ。」
夢我「と、いう事で改めまして。ホラホラホラー~♪あなたの夢を叶えちゃえ! チープドリーミン、ホラー担当! 夢我でぇす。そして、妖精の」
エグたん「エグたんエグ!」
夢我「本日は、お墓が人を呼ぶ? 行ったら帰って来ない、行方不明者続出!謎の墓地、その真相解明にやって来ました。」
エグたん「来たくなかったけど、連れて来られたエグ~」
夢我「本当に、人が消えたんでしょうか?にわかには信じられませんが。 ネットの書き込みはこうです。”墓地で、何処からか、呼ぶ声が聞こえる””行った人が帰って来ない””死者が生者を呼ぶ、悪霊の墓場” まぁ、どれも、噂の域を出ない話ばかりです。」
エグたん「妄想エグな。こんな所、早くズラかるエグ。」
夢我「待って待ってエグたん。せっかく新幹線で太平洋側まで・・・・あ!」
エグたん「夢我! せっかくここが何処だか分からないのに、新幹線とか海とか花火とかプールとか言うな!エグ」
夢我「花火とプールは言ってないけど。ごめんなさい、つい、うっかりぃ。うっかりポン!」
エグたん「芸能人がプール大会するような場所じゃないエグ!」
夢我「ポロリもあるよ~」
エグたん「・・・・・・・・・」
夢我「それはいいんだけど、確かに、お墓だから雰囲気はあるけど、別段、それほど怖いって事もない気もするんだよ。」
エグたん「モザイクかかっているから、何にも分からないエグ。怖さが伝わらないエグ。」
夢我「それもそうなんだけど。」
エグたん「迷惑をかけるユーチューバーの方が規制をかけていない分、臨場感が伝わって怖い場合もあるエグ。」
夢我「見つかったらすぐBANされちゃうけどね。」
エグたん「ああいう輩はBANされるのを想定して、動画、配信しているエグ。やったもん勝ち。・・・・どことは言わないけど、法の抜け道を見つけて、さも、それが正しいって言い張るどっかの政党みたいなやり方エグ。」
夢我「人がいなくなるお墓。どうして、人がいなくなってしまうのかしら? お墓と関連した理由なのかしら?それとも、まったく関係ない理由?」
エグたん「立てちゃいけない所にお墓を立てたから、元々の眠っていた霊が怒って、祟りで呪い殺しているエグとか? 田舎の再開発で、神社やほこらを壊してしまって、氏神様がお怒りになる、なんて話はド定番エグ。ここも田舎だからその可能性もあるエグ。」
夢我「土地の神様とか氏神様を粗末に扱うと、病気や怪我だけじゃなくて、その土地自体に災いが降りかかるっていうのも、割と聞く話ね。あれって、実は、地震や洪水で亡くなった方の供養塔だったりもするのよ。」
エグたん「自然災害エグか」
夢我「そう。地震は定期的に来るものだから。あんなものは、圧力と、圧力の解放だからね。圧力が溜まれば定期的に跳ね返りが起きる。それが地震。そういう土地だから、神社やお地蔵様、ほこらなんかで警告しているわけ。それを無視して、土地開発なんかしようものなら、あっと言う間に倒壊よ。洪水だってそう。自然災害が起こる土地は、それだけ飢餓、疫病だって当然、流行する。地震、洪水、飢餓、疫病。それって目に見えないものでしょ? 昔の人は、神様の怒り、悪霊の呪い、妖怪の悪さ、なんて表現して今に伝えているんじゃないかしら?」
エグたん「もしそうだとすると、人が消える、このお墓も、自然災害が原因で、それを伝えようとしている可能性もあるエグね?」
夢我「祟り、呪いっていうのを科学的に見ると、そう、解釈できる事例があるだけで、全部、それで答えられるわけじゃないけどね。」
エグたん「人が消えるっていうのが、不思議エグなぁ」
夢我「うぅううん。そうねぇ。人が消える。いなくなる。・・・・・食べられちゃうか、入れ替わっちゃうか、どっちかだろうね。」
エグたん「食べられちゃう? 怖いことをさらっと言わないで欲しいエグ。」
夢我「妖怪の類が原因なら、人を呼び込む目的は、人間をエサとして食べちゃうことよね。そのまま、食べちゃう妖怪もいれば、魂を抜いて、魂を食べる妖怪もいるけど。」
エグたん「あと、入れ替わり?なんだエグ?」
夢我「文字通り、入れ替わる事が目的で、人を呼ぶ込むのよ。妖怪なのか悪霊なのか、それとも、別の存在のなのかよく分からないけど、元の人間と取って代わるのを目的とした、何らかの存在っていうのは知られていたみたいね。伊藤先生の漫画とか、諸星先生の漫画に、出てきそうじゃない?」
エグたん「確かに、そういう題材の漫画もありそうエグけども。ホラー漫画の基本エグよ?」
夢我「確かにそうなんだけどね。その、不気味な存在に捕まってしまって、ニセモノが、ホンモノのフリして、社会に戻る。けれど、誰もその事に気づかない。友達も恋人も学校の先生も。父も母も。誰もニセモノが紛れ込んだ世界に、気づく人間がいない。そう、誰もその人の本性を見ているわけじゃない。上っ面でしか付き合っていない。人間なんて所詮、社会の歯車の一部分でしかない。そうやって、ホンモノとニセモノが変わろうと社会は連綿と動き続けていく。
これはね。二重の恐怖なのよ。誰もニセモノだって事に気が付けない恐怖と、人間は社会のパーツでしかない、いなくなろうが、すぐに変わりが見つかり、社会は変わらず動いていく恐怖。」
エグたん「急に社会派になったエグ。チャップリンの映画エグ。」
夢我「妖怪の話もそう、氏神様の話もそう。結局、全部同じなのよ。怪談話になぞらえて、人間社会に、注意喚起をしているのよ。ほら、人間は傲慢だから、すぐ、間違った方向に行こうとする。怖い話で、いましめをすれば、注意するじゃない? 昔の人って頭、いいわよね?」
エグたん「・・・・・・聞く耳があればの話エグけどな。」
夢我「あと今回のキーポイント、お墓に呼ばれる。これも”やまびこ”って話が知られているわ。」
エグたん「ヤッホーって言うやつエグか」
夢我「そう。その”やまびこ”。こだまってやつね。声が跳ね返ってくる現象。声や音が山とか谷に反響して、戻ってくる現象だって、今はなんとなく分かるけど、そういうのが分からない時代は、やっぱり、妖怪だったり妖精の仕業と考えられていたわ。こだまだって、木の霊って、漢字で表現するくらいだし。道路が整備されていない時代は、特に森の中だったりすると、動物の鳴き声が、人の声に聞こえたりするのよね。」
エグたん「発情期の猫なんか、人間の赤ちゃんみたいな声で鳴くから、気味悪い時、あるエグ。」
夢我「あらゆる動物が、鳴くんだから。猿だって鳥だって。鳴き真似する動物なんかはそれを使ってエサを捕食するわけだし、そういうのが下手に人間の音を覚えちゃったら、きっと人を呼んでいる様に聞こえるわよね。」
エグたん「人間の音って言うなエグ。」
夢我「彼等、音を真似る動物にとってみたら、音は全部、真似、出来るのよ。ほら、オウムなんか自然界に存在しない電子音。例えば、電話の着信音なんかも真似するわ。」
エグたん「・・・・動物のそういう能力は生きる為に必要なものエグからなぁ。」
夢我「こだまって別に、こういう人里離れた墓地、山中だけで起こる現象じゃないのよ?反響する山、谷が無くても、鳴く動物がいなくても、起きる現象なの。それをこだまって言っていいかは別だけど。」
エグたん「そんな事あるエグか?」
夢我「ハウリング現象って知ってる?エグたん。カラオケでマイクをスピーカーに向けると、キーン!ってなるやつ。アレ。」
エグたん「分かるエグ。歌い終わったらマイクのスイッチをオフにするのが礼儀エグ。」
夢我「あれって、無音を無音で増幅するから、キーンって音になるの。あまりにも静かな場所だと、耳が、無音を聞いちゃうのよ。」
エグたん「ちょ?え?」
夢我「だから、勝手に耳が、ハウリングしちゃうの。なんにも音が聞こえないハズの場所なのに、ジジジジジジジとか、ジーって、聞こえる事ない?」
エグたん「エグたんはないエグ」
夢我「あぁ。町で暮らしていれば静かだと思っていても、十デシベルぐらいの音はいつでも、聞こえてきているからね。人間が暮らしている所で無音なんて通常、あり得ないから。何かしら生活音に囲まれている。音を気にしていないだけで。脳がね。勝手に、ノイズキャンセリングしちゃうのよ。勉強とか集中していると、周りの音、聞こえないでしょ?あれ。」
エグたん「集中していると確かに冷蔵庫の音とか外の車の音とか、聞こえないエグ。」
夢我「全部の音を認識していたら、気が狂っちゃうわよ。それほど現代は、音に満ちている。世界はノイズだらけ。それが、本当に静かな所。図書館とかね。そういう所だと、反対に、無音が聞こえてきちゃうの。それにほら、こういう人気のない霊園。人の声もしない、動物の鳴き声も聞こえない。無音が聞こえてきたら、誰かに呼ばれた気になっちゃうかもね。」
エグたん「さっきから言ってるけど、無音ってゼロじゃないエグか?ゼロにゼロを足したってゼロエグ。ゼロの音が聞こえるって変エグ!」
夢我「正確にはハウリング現象とは違うけど、耳の鼓膜が、圧力を感じるのよ。気圧って言ってもいいのかな。圧力がかかっている鼓膜の音を、鼓膜が拾うの。」
エグたん「もう何いっているか分からないエグ。」
夢我「本当の無音の世界に入ると、人間、五分ぐらいで気が狂うらしいわ。無音っていうのが不自然すぎて脳が拒絶反応を起こすのか、無音の世界に入ると別の音が聞こえてきて、それを脳が生理的に受け入れられないのか。所説あるけど、本当の無音に人間は耐えられないの。・・・・ある程度、雑音がないと、人間、生きていけないらしいわ。」
エグたん「怖い話エグ。」
夢我「お墓に呼ばれるっていうのも、そういう可能性があるかも知れないかもね。」
エグたん「可能性の一つエグね。」
夢我「今のところ、何も、出てきそうな雰囲気はなさそうだし。今日は、これで、レポートを終わりにしましょう。
あ、そう言えば。」
エグたん「何エグ? 急に怖いエグ。」
夢我「ホラースポットとか心霊スポットとか、あるじゃない?日本中、日本だけに限らず世界中にだけど。肝試し半分みたいな所は別に構わないんだけど、しっかり社を立ててお清めしている場所、あるじゃない?ま、そういう所は管理人がいて一般人が滅多に立ち入れなくはなっていると思うけど。
やっぱりね、空気が違うって。空気が。本物の所は空気が変わるって、聞いたわ。」
エグたん「そうなんエグか?」
夢我「そう。本当に、気軽に行っちゃ駄目な所は空気が違うって。そういう所って何故か、火事でも戦争でも、空襲でも、ましてや地震や洪水でも、生き残るんだって。不思議よね?」
エグたん「・・・・はははははははは」
夢我「何らかの人知を超えた力が働いている土地は、オバケが出ない、太陽が昇っている時間ですら、怖いって。空気が違うから。やっぱりなんとなく寒気がするって。もし、本当に、超常現象が起こるスポットだったら、誰でも分かるみたい。その、ほら、芸能人で霊感があるとかないとか、言ってるけど、なくても、分かるって。空気だから。冷たい空気が、夏でも、するから。」
エグたん「夏でもエグか?」
夢我「そ。まずそういう所に、用がないなら行かない事が前提だけど、どうしても行かなきゃいけない場合は、自分自身も身を清めて。ちゃんと何か儀式をしろって意味じゃなくて、行く前にお風呂に入るなりの最低限、他人に会う身支度を整えて、礼節をわきまえる。作法なんかはどうでもいいから、とにかく、頭を下げて、無礼がないように振舞う。相手だって分かるからね。学や作法より、敬意を持っているかっていうのは。人に会う時、お土産とかもっていくと喜ばれるじゃない?だから、供物を持っていく。なんでもいいのよ。それも敬意の表れだから。」
エグたん「それはなんだか分かるエグ。」
夢我「お墓だってそうじゃない? 亡くなられてここで眠っていらっしゃる方なんだから、敬意をもって立ち入らせてもらわないと。
って事で、撮影が終わったら、全員で、お礼をして帰りましょう。」
エグたん「そうするエグ」
夢我「ホラホラホラ~、チープドリーミンの夢我でした~!」
スタジオ「いやぁ。モザイクだけで何も伝わって来ませんでしたねぇ」
スタジオ「これ事故じゃないんですか?」
※全編会話劇