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エピローグ

ビクッ!と身体が震え、扉の方に目を向けると、それはゆっくりと開いていき、扉の向こう側にはあの時の六人の姿が確認できた。


「初めまして、最近この星の創造神に就任したマミアです。」


そう言って、中央の六歳くらいの白銀の髪に虹色の瞳を持つ少女が頭を下げた。


「問おう、お主がこのダンジョンのマスターか!」


その右隣に立つ高い位置で白銀の髪をポニーテールに纏めたオッドアイの少女が言葉を続けた。


アラスがあまりの展開に言葉をなくしていると、二人の後ろに立つ金髪碧眼の六枚羽の少女が言葉を発した。


「あんた冥土への渡し守のアラスじゃないの!?」


まだ自分が下っ端時代の役職を指摘されたアラスは、その言葉に一瞬に激昂した。


「違う!私は偉大なるアースの地母神ヘラ様とこの世界の創造神ウラノ様より、この未開の地の『神への試練』を任された神門ダンジョン管理者アラスである。この神聖なる地を荒らすお前達に天誅を下す者である!」


そのアラスの言葉に、皆は納得するように大きく頷いた。


「じゃあ、ボコすことは決定で、取り敢えず尋問できる余地は残して、ウェスタ様の所に連れて行くことにしようが。」


その言葉に驚いたのはアラスだった。彼は自称ウェスタ様私設親衛隊会員番号六百三十五番の会員証を持つ程の熱烈ファンだった。ウェスタ様がヘラ様の怒りをかい、最果ての牢獄ダンジョンに幽閉されたという噂を聞いた時には、他の誰もが彼女を見ることも叶わないという捻れた喜びに我を忘れたほどである。


「ウェスタ様が、ウェスタ様がこの地におられるのか!会わせてくれ!お願いだから会わせてくれ!私はかのお方の親衛隊まで務めた者だ!」


アラスは五体投地して乞い願った。皆が驚く中、一人冷静な目でアラスを見つめていたのがファナだった。


「親衛隊にアラスのような下賤な輩は存在しない。何番親衛隊か所属を言え。」


アラスは五体投地のままそのファナの質問に答えた。


「もちろん正規の親衛隊ではない。私などがあの潔癖な彼女の親衛隊に加われるはずもない。私が所属していたのは私設の親衛隊だ。名前は『イエスバージン、ノータッチ』だ!」


その言葉を聞いた途端にファナの顔色が変わった。


「滅して下さい!灰も残さぬように滅して下さい!」


理由も判らない残りのメンバーがキョトンとしているのを見て、ファナは更に言葉を続けた。


「こいつらの親衛隊は、創造神セウスの息子アポロンが盟主であることを良いことにして、触らなければ何をしても良いを信条に隠し撮り、プライベートを許さぬ程の追っかけ行為、彼女を慕う者の物理的な排除行為を行い、彼女が幽閉されてからは、救おうとする者達を堂々と片っ端から排除していきました。」


ファナのその言葉が終わらぬうちに、彩芽の魔法が発動し巨大な岩塊がアラスの下半身を押し潰した。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」


その悲鳴が終わらぬうちに、溟の放った氷塊が上半身を押し潰し、岩塊、氷塊が消え去った後、悲鳴を発することもできず、唸り続けるアラスの身体をファナの終わることのない落雷がアラスを襲い、その身体は黒焦げになり、更には白い灰となって消えていった。


「「押しの幸せを願わぬ推し活は存在しない。それはエゴでしかない!」」


その彩芽と溟の言葉は綺麗にハモり、お互いに顔を見合わせていた。


「その言葉って、僕が崇拝する『ユメヲカケル』様の名言なんですが、彩芽さんも尊敬してるんですか?」


その溟の言葉に、彩芽は顔が真っ赤になって後ろを向いた。


「えっ?そうだ、なんで気づかなかったんだろ、彩芽さんって、もしかして立花彩芽さんですか!」


そう溟に断言されて、立っていられなくなった彩芽はしゃがみ込んでしまい、膝を抱えこみ目に涙をいっぱいに溜めていた。


「…まさか、あのネームがこんな所まで追いかけてくるなんて(小声)」


「ほら、姉貴も黙って立ってないで、いつも応援してくれてた人に直接お礼を言える機会なんて滅多にないんだから、しっかり挨拶しろよ。」


その言葉に彩芽はビクッと身体を震わせ、涙が引っ込んだ。


「あの〜、いつも応援ありがとうございます。Vの◯◯です。これからも、違うかこれから宜しくね。」


と言いながら、琳が彩芽の手を取ると、彼女は満面の笑みで差し出された腕を両手で包み込むように握り、ブンブンしていた。


「まさか、まさか推しにこんな所で会えるとは……ハゥア!」


そこまで言って、彩芽は気を失った。


その後気絶したままの彩芽とその付き添いを申し出てくれたファナを先に夢の園へと送り、コアルームには旧我が家の四人だけが残った。


「僕がこの部屋とコアを調べておくから、みんなは奥の扉の向こう側を調べておいてくれるかな。まだ何があるか判らないから、充分に注意してね。」


実力的には全く心配要らない戦力だったが、どんな罠が仕掛けられているかも判らない状況では、用心に越したことはなかった。


ラルネの言葉に溟が先頭になり、奥の部屋へと入っていくのを見届けたラルネがコアのモニターを確認しようとした瞬間に、奥の部屋から悲鳴が上がった。


「パパ急いで!人が拷問されてる!かなりヤバい!」


溟の声に、ラルネが直ぐにマミアの隣へと転移すると、両手両足をウェスタが拘束されていたような鎖で繋がれ、背中に醜い瘤のような植物を植え付けられている女性が繋がれていた。背中の羽から察すると天使のようであったが、その姿には見る影もなかった。


右目の上は骨折後にまともな治療を受けさせてもらえなかったのか大きく腫れて視界を防ぎ、左目は抉られて眼球が存在せず、右頬の皮膚は大きく剥がされて奥歯の歯茎までが見えていた。


右手も左手もまるで関節が三個も四個もあるように歪に折れ曲がり、指の数もそれぞれ二本程しか残っておらず、それさえも原型を留めているとは言えなかった。


左胸は大きく抉られて、一部肋骨も除去されており、動く心臓が外からも見える状況で、腹部も大きく切開されて中から腸が溢れて床に落ちており、それには蛆が湧いていた。


両足は踵より先が既になく、骨が直接見えており、それぞれが非ぬ方向に曲がっていた。


「どうして生きてるんだ?」


溟の呟きは仕方ないものと言えた。


「その背中の瘤が理由だよ。その瘤は植物性の魔物の一種で、寄生した宿主がどんな状況であっても死なせない。だから、こんな状況でも彼女は生かされてる…」


非常にムカつく案件だった。どうしてあの時のアラスの天誅に加わらなかったのか、三人は心の底から後悔していた。あの程度の苦痛では全く足りなかった。


「…こ…殺して…もう楽にして…」


そう呟く彼女に、ラルネが言葉を返すより先にマミアが答えた。


「絶対に殺さないよ。あんなクソ神の思う通りになってたまるもんですか!絶対に元に戻すよ。絶対にうちの亭主が戻してくれる!」


相変わらずのマミアの姿に惚れ惚れしながら、ラルネが言葉を続けた。


「心配しなくて良いよ。絶対に助けるから今は安心して少し寝ていれば良いよ。」


ラルネはウェスタの時と同じように、拘束具の金属を変性させて解除し、背中に瘤を付けたままの彼女を床に降ろし、清浄の魔法をかけると床に落ちていた腸を切除して念糸で繋ぎなおして一旦お腹を軽く閉じ、普段は全く使うことのない特別医療室への扉を開いた。


「ママちゃんは少し手伝って貰うこともあるかもしれないから一緒に来て、二人はこのダンジョン最下層を見張っていてくれるかな。もし侵入者があったら確実に撃破してくれるかな。頼んだよ。」


そう言って、ラルネとマミアと女性は特別医療室へと姿を消し、コアルームには溟と琳が残った。

最後までお読み頂き誠にありがとう御座います。

何分にも素人連合でございますので、御評価頂けますと、今後の励みになります。是非とも最下部に設定されている☆☆☆☆☆でご評価頂けると有り難いです。

よろしくお願い致します。

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