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家族転生

こんにちは紫兎★です。


あらすじにも書きましたが、今回は「帰還者達の物語」に繋げるための「アストレア第三部」の改訂版です。


作品を継続する励みになりますので、お気に召しましたら、ぜひともブックマークや評価をお願いします。

「無事にお別れの会も終えることができたね。」


後ろの席に座り、母親のお骨を抱える娘が前方の二人に声をかけ、運転席に座る父親と助手席に座る息子が、それに声を発することもなく頷いて答えを返した。


三人の頬には涙の跡がくっきりと残っており、母とのつらい別れを終えたばかりだということが一目で判別できた。


ーーー

「あぁあ、面倒くさいなぁ。なんで僕がこんなことをしないといけないんだよ。地球で死んだ魂は、地球で輪廻転生すれば良いんだよ。『三人の家族が死ぬ時まで見張り続けて、死んだらアストレア?とかいう世界へと連れて行け。』そんなの苦行というしかないよね。こっちのちょっとした都合で、別の魂を回収してしまった罰にしては重すぎるよね。魔素も神素もないこの世界だと魔臓も成長しないし、苦行でしかないんだけど。」


大きな交差点で停車している三人の乗った車を天上から俯瞰(ふかん)しながら、たくさんの羽を背中に背負った一人の天使が愚痴っていた。彼の言葉からは創造神より自分に下された指示にかなりの不満を感じ取ることができた。そんな彼の目に、その交差点に向かって、少しフラフラしながら走ってくる車が目に止まった。運転しているのがかなり高齢の紳士であることを確認すると、彼の薄い唇で構成された口角が醜く歪んだ。


「これはジャストタイミングというヤツでないかい。あの車運転するのは、資料によると交差点で止まることなく加速して、周囲の車を巻き込みながら交差点内に侵入して、青信号で進んでいるトレーラーや大型トラックに側方から追突されて死亡する老人だよね。少し方向をイジってあげれは、あの三人の乗る車に追突するから、少しブレーキを細工するだけで、巻き添え食らうよね。完璧でないかい。」


そんなことを言いながら、老人の車を誘導して、彼は三人の乗る車に追突させた。


弾みで老人の車は停車し、ブレーキを壊された彼らの車は代わりに交差点内に押し出され、右から来た大型トレーラに衝突されて対向車線へと押し出され、直進してきた大型トラックとタンクローリーと正面衝突する形となり、直後に爆発炎上した。


もちろん、彼ら三人に生き残る術はなかった。


「よっしゃあ!大成....」


大騒ぎする天使の頭を、老人が振り回した大きな杖が張り飛ばした。


「お前は、何を考えている!彼らの寿命がどれだけ残されているか知らないはずがないだろ!お前は天使失格じゃ!もう一度考える力もないミジンコからやり直せ!」


老人の声に、天使はあっという間に消失し、そこには光り輝く宝玉のみが残された。


「あのクソと呼ぶのも(はばか)れる天使でも、これだけの神力を貯めておるということが儂には到底信じられん。徳を積んだ魂の神素を不正に取得するなどせねば、これだけの宝玉は誕生せんはずじゃ....最近の神界の堕落は目に余るの。こんなことを目にした以上、輪廻転生を司る霊魂管理局を調べる必要も出てくるかもしれんな。面倒くさいことになったのう。」


そんなことを語る老人の所に、三つの霊魂が漂ってきた。


「どれも濁りの少ない魂ではないか、このままあと数度転生を繰り返せば、この神の流刑地である地球でも、そう遠くない未来に神性を取り戻し、天上にまで到達しうる可能性が高いのは明らかじゃったのに....できるなら、この世界での転生を選んでほしいが、約束じゃから仕方がないのぉ。あと、これは儂からの詫びの証じゃ。」


そう言うと、老人は天使の残した宝玉を三つに割り、それぞれを浮遊する三つの魂を自分の手元に手繰り寄せ、それと融合させた。


「地球と違い魔法が当たり前のようにある通常の世界だと聞いておるでの。これは先達からの(ささ)やかな餞別とでも思って受け取ってくれ。」


浮遊する三つの霊魂は、老人の言葉に応えるようにチカチカと明滅すると、やがて、何もない空間に吸い込まれるように消えていった。


「何れを選択するにせよ、幸せになるのじゃぞ。」


ーーーー

霧の漂う白い空間に、三人の姿があった。


親父(おやじ)、これってあれだよな。」


「あぁ、転生の間だろうな。」


「転生の間って、よくネット小説とかで出てくるあれのこと?」


「そうあれのことだなどと話す三人の頭の中に声が響いた。


「マミアの夫と、二人の子達よ。アストレアにようこそ。私はこの世界の神の一柱であるアルテミアと申します。」


三人の頭の中には、マミアという固有名詞は存在しなかったが、不思議とそれが先日他界した妻であり、母であることが理解でき、三人は顔を見合わせた。


「マミアは私からの使命を受けて、あなた方の世界へと転生しておりましたが、その使命を無事に終えて、この世界へと帰って参りました。彼女は既に転生を果たしましたが、私と彼女との間で、あなた方家族が寿命を全うした際には、望むならばこちらの世界へと転生させてほしいとの約束を交わしました。私の一存では世界を越えての転生は不可能ですので、既にあなた方の暮らしていた世界の創造神には話を通しており、本人が望むならという条件で、転生を認めて頂いております。あとはあなた方の決断次第です。どうなされますか?」


その女神の言葉に、すぐに頷きかけた夫と娘だったが、それを息子が止めた。


「確認したいことがあります。構いませんか?」


「私達は記憶を持ったまま、同じ姿で転生するのですか?」


「ある程度の記憶を持ったまま転生することは可能ですが、産まれる種族を特定することはできません。それに産まれて間もない赤子が、今あなた方が所有する記憶を持つというのは不可能です。加齢とともに少しずつ記憶が戻ってくるようにするのは可能であると考えてください。しかし重要な、例えば自分達がマミアの家族であるという記憶などは、産まれ落ちた時から所有すると考えてもらって差し支えありません。」


母の記憶を失わないと確認した子供達は、軽く頷いた。


「私達は、家族として転生するのですか?」


「いいえ、それは不可能です。三つ子に同時に転生する可能性は(ゼロ)ではないですが、ありえないと判断します。同一場所に転生することはまずありませんし、同一種族に転生する可能性すらないかもしれません。」


「えぇ〜、そんなの出会っても家族かどうか判らないじゃん!」


娘の言葉に頷いた父親が、更に質問を重ねた。


「家族を見回して気づいたのですが、私達は三人ともに妻の形見であるガラス製のクロスペンダントを身に着けています。これを転生先に持っていくことは可能ですか?」


女神は、人差し指を顎に当て、少し顔を傾けながら、少し考え込むように答えを返した。


「それぐらいならば可能でしょう。ただし、あなた方の暮らしていた元の世界と違い、何の力もない人間が生きていくのには、かなり厳しい世界だと言えます。奪われたり無くしたりすることもあります。それぞれに小さなポケット並みの収納空間を付与して、その中に収めておくこととし、ある程度の成長したあかつきに取り出せるようにしてみましょう。それで構いませんか?」


「助かります。有り難うございます。」


「それでは、そろそろ転生の作業に移りたいと思うのですが?」


その言葉を聞いた息子が驚いたように尋ねた。


「えっ?優良スキルの付与とか、特殊職業の選択とかは無いんですか?」


息子の言葉にやっぱり言いやがったという表情(かお)をした女神が答えた。


「何か勘違いしているようですが、これは私が招聘した転生ではありません。ただ所属する世界を変更するだけのものです。あなた方がよく口にするチートというものはありません。産まれ出た種族が持つ特性が全てだと考えて下さい。」


その言葉に衝撃(ショック)を受けながらも息子が尋ねた。


「種族を選択するのは…」


「無理です。今のあなた方の魂の格に合った種族が選択されます。」


落ち込む子供達の手を取り、家族三人が輪になり円陣を組んだ。


「例え何に生まれ変わろうとも、俺達が家族であることに変わりはない。再び出会い、ママを探し出すぞ!」


三人は歯を食いしばり、大きくウンウンと頷いた。


「「「よろしくお願いします!」」」


手を握りしめたまま、三人の声が揃い、杖を掲げた女神の仕草に合わせて、彼らの姿が徐々に薄くなり始めていた。


「いいか!前の世界では絶対に会えることのできなかったママちゃんに会えるんだ!気合い入れろ!絶対に見つけるぞ!」


「「オゥ!」」


「獣がペンダントしてても、しっかり拾ってね。」


「「バカ、縁起でもないこと言うな。」」


娘の言葉に二人が応えるように、三人の姿は空間から消えていった。


「ふぅ、終わりましたね。マミア、一応約束は果たしましたからね。あとはあなた達次第ですが、難しいでしょうね。」


そう言いながら、一仕事終えたというような雰囲気を醸し出して、アルテミアは大きく背伸びをすると、人が変わったように態度を変えた。


「あぁ、かったるかった!私も早くこんな世界から逃げ出したかったのに、あの糞ウラノが最低の責任だけは果たせなんて言うから最後まで残ってたけど....ホント(わずら)わしい仕事を押し付けやがって..それ言うなら、あんたがこの世界の面倒を最後まで見るのが責任ってもんだろ。他人に厳しく自分に甘くじゃ、誰も付いてこないっていうの。本来は主神であるはずのクロノをあんたがハメた時点で、この世界は終わったんだよ。なんで判らないのかね。」


などとブツブツ愚痴をこぼしながら、彼女もその白い空間から消えていった。


アルテミアは気づかなかったが、三人が転生していった時、何処から湧いたてきたのか朱、金、蒼の三つの光の(たま)が、彼らを追いかけて消えていった。

最後までお読み頂き誠にありがとう御座います。

何分にも素人連合でございますので、御評価頂けますと、今後の励みになります。是非とも最下部に設定されている☆☆☆☆☆でご評価頂けると有り難いです。

よろしくお願い致します。

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