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闘姫

「傷を受けたものは、控えの者と直ぐに交代しろ、一人で全てを成そうと思うな、そんなことを望めば直ぐに死ぬぞ、止めを刺そうと思うな、深追いするな、それが多人数を相手にせねばならぬ時の生きる術と知れ!」


マミアの声が響く中、塔の中でまだ戦い続けている第三騎馬隊のメンバーは、もはや二十名ほどしか残って居なかった。


しかし、倒した相手も楽に三百名は超えており、階下には人の死体が山積みとなっていた為に、階段を壊した効果も乏しくなっていた。


「第一魔法師団、放てるものは全員で火炎放射或いは大火球を、階上の奴らに放て!」


アスタル皇太子の怒声が、響き渡った。


「しかし、そんなことをすれば、仲間にも被害が....」


「構わん!私が放てと命じているんだ!お前は私の命令が聞けないのか!」


「し....しかし」


そう叫んだ瞬間、皇太子は抜刀し、目の前の魔法師団副隊長にその刃を振り下ろし、彼は真っ二つとなって倒れた。


それを見た魔法師団の隊員達は、直ぐ様呪文を唱え始め、魔法待機の状態となり、次の皇太子の命令を待っていた。


「放て!」


その合図と共に放たれた炎の群れは、途中の仲間の兵士達を道連れに、階上へと襲いかかり、暴れまくって霧散した。そこには王女の盾となった十人程の、 真っ黒な焼け焦げた死体が立ち続けて障壁を築いていた。


マミアは、ミオカステーロに襟首を掴まれて、更に一つ上の階へと引きずりあげられ、残り半数となった部隊メンバーもそれに続いた。


「マミア王女様、私はお館様より、万が一の際には、王女様が生きて恥を曝さぬようにあなた様の介錯を命ぜられておりました。それは私にはできそうもありません。ですから、これをお渡ししたいと思います。」


それは自決用の毒付与の効果付きの短剣だった。マミアがそれを受け取り、階上へと続く階段に向かって投擲すると、悲鳴が湧いた。


「外壁より、階上へと到達した敵もいるようだ、もはやこれまでだ。この命尽きるまで共に地獄の底まで戦おうぞ!特攻だ!気合いを入れろ!」


「「「「ウォォォォォ!」」」」


返り血で黒い鎧を更にどす黒く染めた修羅達が、一斉に階下へと向けて突入していった。


その怖ろしいまでの迫力に押し負けた兵達は次々と彼らの剣の錆へと変わった。


しかし、腕が飛び、首が飛び、阿鼻叫喚の地獄の中を飛び回った修羅達も、多勢に無勢、一人また一人と地に倒れていった。生き残っている者達も、身体中に矢や槍を生やし、いつ命が散ってもおかしくない状況のまま、階下へ階下へと歩を進め、ようやく皇太子や皇子の元へ辿り着いた時には、マミアも含め僅かに三人となっていた。


「貴様らが大将か!その命貰い受ける!お先!」


そう叫んだマミアの両隣の騎士が、警護の兵士達の槍で串刺しにされながらも、手にした両手剣で、アスタル皇太子とサラハク皇子の首を刎ね、更に槍や剣を突き立てられて、笑いながらその場に倒れた。


右手にハルバード、左手に両手剣を持ち、全身に剣や槍を生やした悪鬼羅刹を彷彿させる血塗れのマミアが、ゆっくりと歩を進めると、それに合わせて兵士達は後ずさった。


そして、マミアがついに塔最下層の広場へと到達するのとほぼ同時に、入り口から多くの護衛の兵士を引き連れて、将軍とマサシゲが入ってきた。

「お前らが元凶か....」


マミアのその言葉に、護衛の兵達が将軍とマサシゲを何重にも取り囲んだ。


全身から血を垂れ流し、血でベッタリと張り付いたどす黒く汚れた髪と、額の傷から流れた血で左目を塞がれた状態でも、その闘気は衰えず、まだ少女の体躯であっても、まさに闘神という言葉に相応しい姿であった。


マミアが、左手の両手剣を収納し、右手のハルバードを大きく振りかぶると同時に、周囲の兵達が一斉に彼女に飛びかかったが、その兵達の首は綺麗に大鎌の上に並んだ。


肩でハァハァと息をしながら、マミアが次から次へと襲来する兵士をハルバードで突き刺し、切り刻んでいくと、一人の巨躯の戦士が自らの身体を刺し貫いたそれをガッシリと抱え込み、それを大きく振り回すと、小柄な彼女は吹き飛んで、デスサイズを手放した状態で壁に身体を強打した。彼女は直ぐ様、両手剣を取り出し、その大男を真っ二つとすると、再びユラリと立ち上がった。


そのマミアの姿に固まってしまったマサシゲを見て、闘気に呑まれたと判断した将軍の見解は、全く的外れのものだった。


マサシゲの目に映るマミアの姿は、年齢は別として、これまで何度も夢見てきた人の姿によく似ていた。黒髪黒目で肩までのくるくるヘアー、カチューシャは付けていなかったが、額鎧がそのイメージを醸し出していた。


嘘をついた時も、問題を起こした時でも、どんな時でも自分を信じてくれて、相手が誰であろうとも、例え学校全部を相手にしても、自分を護ってくれたあの人の姿だった。


身体が震え、両眼からボロボロボロボロと涙が溢れ、目の前は涙で滲んでまともに見えなかった。


しかし、それと同時に、その人をここまで追い込んでしまった原因が自分であるということが許せなかった。どう言い訳しても、どれだけ謝っても許されないことをした自覚があった。訳が判らなくなって、思考が空回りし始め、頭が真っ白になってきた。


どうしたら良いのか判らない。いつも助けてくれた人は、自分がしたことのせいで、目の前で今にも命が尽きようとしている。


(誰か、誰か、誰か助けて!親父、姉貴、いったいどこにいるんだよ!助けてくれよ!)


そんなマサシゲを見て、この場で指揮を取らせることを諦めた将軍は、周囲の兵の指揮を取り始めた。


「相手が鬼のように強かろうと、魔法は一切使えない。全員で一斉に槍を突き出せば、そのうちの何本かは確実に刺さる。今の相手の姿がその証だ。一度で倒せなければ、何度でも繰り返せば良い。相手も儂らと同じ生き物だ。不死でも無ければ、悪魔でもない。」


その声に落ち着きを取り戻した兵達は、その指示に従い、何度も何度もマミアに槍を突き立てた。


そして、窓際に両手剣を支えに、それによりかかるように立ち上がった口から血を流し、全身血まみれのマミアが叫んだ。


「例え....この身が..朽ち果て....」


槍がグサリと何本も突き刺さる。


「ようと....私は....お前たちが..したことを忘れない....」


再び、兵達が槍を何本も突き立てる。


「 悪魔に..魂を..売ることに....」


終わることなく、槍は突き立てられる。


(やめろ、やめろ、もうやめてくれ)


マサシゲの心の中が絶叫していた。


「なって..も....必ず....戻って」


そんなマサシゲの思いにも関わらず、槍は、何度も何度も突き立てられた。


「....きて..やる....覚悟し..て待って....ろ」


その言葉を最後に、ゆっくりと後方に倒れたマミアは、窓から海へと身を投げるように落ちていった。


マサシゲは、それを見て絶叫し、号泣しながら走り出し、自分も窓から飛び出そうとしたところを、大勢の兵に止められた。


それでも彼は止まらず、大暴れしながら多くの兵を投げ飛ばして、それを振り解きながら窓へと近づいて、海に飛び込もうとしたため、将軍に腹部に重い一発を貰い、気を失ったところを、砦の外で待機している部隊へと連れて行かれた。

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