第6話 奪われたもの
夜のスラムは静寂の中に不穏な空気を漂わせていた。
街が眠りについて後も、スラムでは人影が闇に紛れて蠢いていた。
誰かが泣き、誰かが囁き、誰かが獲物を狙っている。
リムは瓦礫の隙間に作った寝床で、小さくなって眠りについていた。
破れた布切れを体に巻き付け、胸元の大切な布の財布を隠していた。
鉄貨6枚 銅貨7枚
自分で稼いだ大切な財産。
(この金があれば……)
リムは夢の中で黒パンや小さな果実、そして肉の串焼きを思い浮かべていた。
だが、そのささやかな幸福は唐突に断ち切られた。
バン バギッ
荒々しい音と共に寝床の隙間がこじ開けられた
「ん?」
突然の音に目を開けると、複数の影が闇の中から近づいてくる。
(……誰だッ)
口に出す間もなく、侵入者はリムの手足と口を塞いだ
「こいつだ……間違いねぇ銅貨をもってやがるぞ…」
リムは塞がれた口で必死に声を出そうとする。
「やめっ……ぐっ…」
必死の抵抗も虚しく、頬を殴られる。
全く歯が立たない。
「これだ。へっへっ串焼きなんか食いやがって、いい暮らししやがってよ」
ベキッ ぶふっ
胸に隠した財布は乱暴に引きちぎられた。
そしてリムの腹が殴られる。
「ありがとうよ。坊主。大事に使わせてもらうわ」
男たちは笑いながら、その場を去っていった。
寝床は荒らされ、布切れは割かれ、財布は引き千切られて奪われた。
リムは泥まみれになりながら、地面にへたり込んでいた。
(全部……奪われた……)
今まで貯めた鉄貨、銅貨が全て奪われた。なくなった。
胸に広がる喪失感が、言葉にならない感情となる。
そして、身体が震えていた。
両眼からは涙が溢れる。
「うぅぅぅぅ……」
ただただ、涙がこぼれ落ちた。
悔しさと恐怖。喪失感と虚無感。
リムは自分を抱きしめながら、悶え苦しむ。
(……なんで…なんで……僕なんだ……)
スラムの夜、誰も答えてなどくれない。
奪われた物の重さだけが、リムの心に深く刻み込まれた。
リムの成長メモ:
・貯めた金を奪われる経験をし、スラムの厳しさを最認識する。
・金を持つことのリスクを学び、慎重さへの意識が芽生える。
所持金・所持品:
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