第5話 結果と確信
廃棄場所に漂う生温かい匂いはいつもと変わらない。けれど、リムの心持ちは以前とはまるで違っていた。
毎朝、瓦礫をかき分けながら、リムは目利きの力を発揮する。
「基準価値:鉄貨2枚」
そんな評価が視界に浮かび上がるたび、手は自然と動く。鉄片、錆びた工具、布の切れ端——以前なら無視していたものたちが、リムにとっては宝のように見えた。
恩寵の目覚めから数か月。春が過ぎ、夏の暑さが街を包み始める頃には、リムの日々の売り上げは鉄貨10枚を超えることが増えていた。
「鉄貨15枚だ」
回収屋の親父は目を丸くしていた。
「お前、最近やけに稼いでるな。スラムにしては贅沢な暮らしでもしてるんじゃねぇか?」
「おっちゃんが買ってくれるから、毎日黒パンが食えてるよ」
リムは控えめに笑いながら、鉄貨を銅貨1枚に両替してもらう。
変わった日常、確かな自信
かつては黒パン1つで精一杯だった。それが今では黒パンに加えて、小さな果実を買う余裕さえある。
「お兄ちゃん、果実もう一つ買う?」
屋台の少女が笑顔で声をかける。リムは一瞬迷ったが、鉄貨2枚を差し出した。
「じゃあ、赤いのを一つ」
甘酸っぱい香りが鼻をくすぐる。果実の柔らかさに舌鼓を打ちながら、リムは内心で確信する。
(これなら、もっと稼げる)
蓄えた鉄貨が積み重なり、いつしか銅貨10枚となった。スラムでは大金だ。
その夜、リムは自分の寝床で銅貨を手のひらに転がした。月明かりに照らされたその光景に、胸の奥が温かくなる。
(ここから先、どうなるんだろう)
自信と希望。恩寵のおかげで、リムは確かな手応えを感じ始めていた。
リムの成長メモ:
• 目利きの技術が安定し、収入が大幅に向上する。
• 自分の行動が結果につながることを確信する。
• 金銭管理の意識が芽生える。
所持金・所持品:
• 所持金:鉄貨2枚、銅貨10枚
• 所持品:果実1つ、黒パン(食料)