第2話 変わらない日常と拾うゴミを選ぶ行動
昨夜の祭りの余韻が街に残る朝、スラムの人々はいつもと同じように忙しく動き回っていた。鉄貨数枚のために誰もが必死だ。教会裏のゴミ山は既に片付けられ、僅かな残り物を巡って喧嘩すら起きていた。リムは群がる人々から少し離れた場所で、静かに地面を見つめていた。
昨日、あの瞬間に見た「青白い光」と「言葉の浮かび上がり」が頭から離れない。
(あれは何だったんだろう?)
考えても答えは出ないが、心の片隅に「特別な何かを手に入れた」気持ちがあった。
リムは瓦礫の山から手頃な木片を拾い上げた。それをじっと見つめると、また青白い光が僅かに揺らめく。そして浮かんだ文字は「基準価値:鉄貨1枚」。
リムは一瞬目を見開いた。昨日だけの出来事ではなかったのだ。
「……これ、売れるかもしれない」
少し興奮しながら、リムは他の物も試し始めた。使えそうな鉄片、錆びた道具、布切れ──青白い光はその全てに価値を示した。だが、それを見ても価値なしのものも多い。
(ただ拾えばいいわけじゃない。価値のあるものを選ばなきゃ)
気づけば太陽は既に高く昇り、スラムの人々も各々の拾い物を抱えて去っていた。リムは慎重に選んだ品を持ち、回収屋へ向かった。
「お、今日はいいもん持ってんじゃねぇか」
回収屋の親父が手に取ったのは錆びた鉄片だ。リムは心の中で「やっぱり」と呟いた。
「おめぇにしちゃ、まぁまぁだな」
そう言って、親父は鉄貨5枚を手渡してきた。
(選べば、もっと稼げるかもしれない)
恩寵が与えた新たな視点。リムはそれを活かすことを決意し、街へと歩き出した。
リムの成長メモ:
• ゴミ拾いも「選別」をすることで効率が上がると気づいた。
• 恩寵による鑑定の有用性を理解し始めた。
所持金・所持品:
• 所持金:鉄貨5枚
• 所持品:使えそうな布切れ(価値なし)