95 背中に汗が吹き出てくるのを感じた
「到着!」
広い空間に出た。
バスケットコートが二面ほど入る程の広さ。
半分ほどは岩盤が露出し傾斜しているが、奥の方は玉砂利が敷き詰められたように真平らだった。
天井は高く、足音が響く。
右手の壁に沿って、奔流が水飛沫をあげていた。
中央に大きく武骨な木製机。
その周りに椅子が八脚。
机の中央には燭台がひとつ。
白っぽい岩肌の壁には、ブラケットが十燈ほど。
それらの光に照らし出された空間はひんやりとして、水音だけがこだましていた。
「どう? この大広間」
女はそう聞いてきたが、感想は期待していないのか、かすかな溜息をついて椅子に腰掛けた。
ンドペキは突っ立ったまま、改めて女を見た。
軽装のバトルスーツ。
現在主流の、絹のようにしなやかな素材。
ナノカーボンの超伸縮性スーツ。
編みこまれた金属が放つ緑がかった光沢が、この洞窟の大広間の中では存在感を際立たせていた。
チタン合金のように見える肩当やブーツには、濃紺の花模様。
ヘッダーとスコープ付きのゴーグルは一体型で、こちらも合金製。
目の部分にはめ込まれたガラスはハイグロスの光沢仕様で、これも緑色を放っていた。
いずれも非常に高価なもののようだった。
「ん!」
ンドペキは身を硬くした。
女がヘッダーを外そうとしている。
耳の下から順に、留め金を外していく。
女はこちらを向いている。
ンドペキは、背中に汗が吹き出てくるのを感じた。




