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91 それぞれの夜

 夜、十時、ちょうど。

 言われたとおりに、西門を出て北に向かって走った。

 もちろん、フル装備である。


 夜に兵士が城門を出ても、怪しむ者はいない。

 この辺りは北部方面管轄ということになっているが、どこで行動しようが自由だ。

 しかも、東部方面攻撃隊はハクシュウ隊と呼ばれて、誰もが一目置く存在である。

 城門を固める守備隊も、駆け抜けるンドペキをチラリと見ただけで、気にする様子もない。



 ニューキーツの街が遠ざかり、闇の中を突っ走る。


 さあ、お望みどおり、来たぞ。

 姿を現せ。




 ンドペキが荒野を突っ走っているころ、イコマは気を揉んでいた。

 今日、まだアヤの訪問がない。

 もうとっくに来てもいい時刻。

 いつもなら、仕事帰りという時間帯に顔を出してくれるのに。



 いや、まだ十時。

 落ちつこう。



 強制就寝時間まで、まだ間がある。

 自動的に思考が停止してしまう時刻が近付いているが、それまでには来てくれるだろう。

 きっと、仕事が忙しいのだ。

 重大な会談前夜のことでもあるし、政府機関内は右往左往しているのかもしれない。

 アヤも帰るに帰れない状態かもしれない。



 今夜は無理かな。


 しかし、アヤの身によもや何かあったのではないか。そんな悪い予感も、拭いきれないでいた。

 交わした会話の中に、監視システムがアラートを発するような内容があったのだろうか。



 ハクシュウの情報?

 抱き合って涙を流したこと?

 アヤがパパと呼ばずに、おじさんと呼んだこと?

 アンドロが住む別次元の話題?

 そもそも、連日アクセスしてきたこと?

 

 考え出すと、不安で堪らなくなるのだった。




 同じころ。

 チョットマはコリネルスから仕入れたクシの情報を反芻していた。


 けっ、卑怯者め。

 フン、見損なってもらっちゃ困るぜ。

 それにしても、何だって私が。

 恨むならハクシュウだろ。


 でも、蛇みたいに執念深いやつだったら、嫌だな。

 ンドペキがいうように、警戒だけはしておかないとね。


 チョットマはくわばらくわばらと呟きながら、ベッドに潜り込んだ。


 なぜ、蛇は執念深いって言われるんだろ。

 どうでもいいか。

 蛇って、実物、見たことないし。


 そして、ものの数分もしないうちに、寝息をたて始めた。

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