82 代表指名
木々の間から垣間見える生物は、人間のように二足歩行をしていた。
人より一回り大きく、一様に黒い肌をしている。
脚は短いが腕は異様に長い。髪や体毛はなく、むろん衣服はまとっていない。
こちらに関心を示すものもいるが、戦闘の気配はない。
それぞれが淡々と何らかの作業をしているようだ。
ンドペキはすでに、ハクシュウが自分を攻撃することはないと確信していた。
もし攻撃するつもりなら、大量の生物がいる前で、派手なまねをするはずがない。
彼らが戦闘用の人工生物であったら、高みの見物をするはずがない。
あの数では、こちらが大混乱する。
全員無事に街まで帰れる可能性はないに等しい。
今日の作戦の本当の目的は、このコロニーを偵察する、あるいは反応を見ることだったのではないか。
だからこそ、完全武装だったし、稜線を越えてからの行動は未定だったのだ。
軍の中枢からの指令は、ハクシュウにだけ伝えられる。
その指令に添った作戦だったのかもしれない。
ンドペキは、コロニーを凝視しながらそんなことを思った。
と、森を出てくる者がいる。
姿は異様だが、普通の腕を持っている。黒い裸体が背筋を伸ばし、歩いてくる。
やはり、ヒトか……。
ゆっくりと川原に近付き……。
胸の辺りが膨らんでいる。
女か……。
ん!
女は、そのまま水面に歩みを進めてくる。
まるで地面を歩くように。
彼女が歩く部分だけ、水面にガラスを置いたように。




