80 戦闘準備!
サリの手がかりはまったくないまま、アップット高原の稜線を越えた。
今日は、ドラゴンの姿もない。
稜線を越えると大気は幾分澄み、平原を見渡すことができた。
「停止!」
「ケーオーフォーメーション!」
「戦闘準備!」
立て続けにハクシュウの緊迫した声が聞こえた。
ケーオーフォーメーション。
強靭な敵に集団で近接して立ち向かうときや、大量の敵に囲まれたときに防戦する隊列。
つまり、ハクシュウは全軍、自分の下に戦闘態勢で集まるよう指示している。
いよいよか。
そんな考えが頭をよぎった。
先ほどの刺客もハクシュウが……。
しかし現時点では、ハクシュウの命令に従わざるを得ない。
ンドペキはハクシュウが立つ地点に向かって突進していった。
俺は仲間を撃つのか。
攻撃されたらやむをえないか……。
全員を敵に回したら勝ち目はない。
何人かは傍観の態度を取るだろうか。
そんな思いを煮えたぎらせながら。
チームのメンバーの動きを確認した。
それぞれがハクシュウの元に向かって最速で移動している。
補給班のチョットマだけは、スピードを落とし、ハクシュウの後方に移動を始めている。
よく訓練された軍の行動として申し分ないし、どこにも不審な動きはない。
「攻撃目標、北北東十三度、距離九キロ。しかし、命令あるまで発砲厳禁!」
ハクシュウの命令が飛び込んできた。
すでにフォーメーションは整っている。
ハクシュウを中心にして集まった兵達は、互いに五十メートルほどの距離を保って停止していた。
それぞれの銃を構えて。
てんでばらばらに駒をばら撒いたようなフォーメーションだったが、それぞれのチーム内での役割分担に従って、位置取りがなされていた。
誰も口を開くものはいない。




