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79 彼女は青いバッチを付けていた

 パキトポークが、思い付きだと断ってから、

「サリ、もともとあの連中だったんじゃないか」と言ったのだった。


「ええええっ! そんな!」

 叫んだのは、もちろんチョットマ。


「そんな、ってなんだ?」

「失礼しました。でも、そんな!」

「だから、そんな、ってなんだ?」

「いえ、その」


 そんなバカなことがあるか!

 そう言いたいチョットマの気持ちはよくわかる。

 本当は、ふざけるな!とビンタのひとつも飛ばしたいところだろう

 微妙に険悪なムードが漂ったが、ハクシュウがさらりと雰囲気を変えた。



「いかなるケースも、可能性はゼロではない。大の仲良しのチョットマには受け入れられないだろうが。ま、しかし、単に思いつきレベルの話だ」


 チョットマが頬を膨らませている。

 マスクの上からでもわかるほど。


「ちなみに俺の意見を言うと、サリに限って、それはないと断言できる。なぜなら、彼女が入隊したときのことを覚えているからな」


 ハクシュウに視線が集まった。



「彼女の入隊を勧誘したのは俺とンドペキ」


 チョットマがパキトポークをまだ睨みつけている。


「ある日、ハイスクールの卒業生が晴れて街に出てくるのを見計らって、俺とンドペキは入隊者の勧誘に行った。門からぞろぞろ出てくる連中の中から、品定めをする恒例のアレだ。そのとき、彼女は青いバッチを付けていた。どういう意味か、わかるよな」




 ハイスクールでは、街のすべての子供が育てられている。

 すべての子供は幼子の時から、親元を離れて暮らす。全寮制。

 その最終学年がハイスクール。

 ほとんどがメルキトである。

 稀に、若すぎる再生が行われたマトやメルキトも混じっている。

 制度上はホメムが生んだ子も同じハイスクールへ行くことになっているが、その例はもう絶えて久しい。


 寄宿舎に入るメルキトは二通り。

 胚の段階から管理されて育てられた子供と、母親が生んで物心付かないうちに預けられた子供。

 胚から育てられているメルキトの子供達は、青いバッジを付けて街に放たれる。


 優秀で従順な一部の子供は街に出ることなく政府機関や政府系企業に引き取られ、専用の教育を受けることになるが、多くは街に出て自力で生きていくことになる。


 母親が生んだ子供は赤いバッチ。

 親が迎えに来る場合も多いが、他は青いバッチ同様、勝手に生きていくことになる。



 その新人達を、様々な会社や商店、あるいは個人が勧誘に行くのである。

 的を絞りきれないまま社会に放り出された子供にとっては、厳しい試練の場だ。

 勧誘といえば聞こえはいいが、その場で自分の将来を決定しなくてはいけないのだから。


 もちろん勧誘する側にも、その場に参加するための政府の許可が必要だ。

 東部方面攻撃隊のような軍は、その特権で常に最前列で新人達が出てくるのを待つことができる。




「再生された人ではなく新しい人を選ぶ場合、俺たちは、いや、ほとんどの隊がそうだが、青いバッジから仲間を選ぶ。今の仲間も、たいていはそういう人だ。知っているのは本人と、選びに行った数人だけだがな」


 チョットマが、小声で言った。

「青バッチ‥‥‥、だったんだ‥‥‥。私も‥‥‥」




 スジーウォンが帰ってきて、異常はないと報告した。

「よし、じゃ、みんな聞いてくれ」


 ハクシュウがキュートエフで文字データを送ってきた。

 部隊内のメンバーに同時送信が可能。

 イコマには、チョットマがキュートモードにして転送してくれる。

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