75 私どもにも、少し尋問をする権利が
ハッ!
ンドペキは身構えた。
が、JP01に異変が起きていた。
発砲されたのはプラズマ弾。
む!
JP01の胸を貫通している!
しかし、その瞬間にJP01の姿は掻き消えていた。
まずい!
ンドペキはとっさにレイチェルの前に立ちはだかり、対岸からの攻撃に備えて、簡易なバリアを張った。
レイチェルを抱えてステージを降りようとした。
しかし、レイチェルは自軍に向き直り、両腕を大きく広げようとする。
そして、「静まれ! 攻撃するな! 武器を下ろせ!」と、叫ぶ。
ンドペキはレンチェルを抱え込もうとしたが、緑の瞳がそれを拒む。
いかん!
レイチェルが対岸に向かって立った。
いかん!
いかんぞ!
これでは撃ってくれと言っているようなもの!
自軍では、戦闘体勢に入ろうとしている者が大勢いた。
レイチェルの言葉が聞こえなかったはずはないが、多くの者が銃口を対岸に向けている。
それらは攻撃部隊の一団で、レイチェル直属の防衛隊は、指示に従ってすぐに戦闘姿勢を解いている。
くっ!
せめてもの盾にとレイチェルの前に立つ。
バリアだけでは心もとない。
「ありがとう。でもそれはやめて」
「しかし!」
「命令です」
対岸にはなんの動きもない。
「銃をおろせ!」
ハクシュウの声が響いていた。
「発砲したものを拘束しろ!」
数秒後、
「その必要はないわ」
声が聞こえ、JP01が先ほどの位置に立ち現れた。
「あっ」
JP01がひとりの女を脇に抱えていた。
「殺してはいないわ」
ンドペキはその者を見て、再び声をあげた。
「ああっ!」
それは、昨夜、洞窟を案内してくれた女だった。
「ンドペキ、あなた、誰でも知っているのね」
JP01が微笑んだ。
女は気絶しているようで、ぐったりとJP01に抱え込まれている。
「まことに! 申しわけありません!」
レイチェルが叫んだ。
「いいのです。この人は一般人のようですし」
レイチェルが再び頭を下げた。
JP01がレイチェルの頬に手を添えて、顔をあげさせた。
「今日の会談は、これで終わりとしましょう」
「……」
「お願いの件、くれぐれもよろしくお願いします。色よいご返答をお待ちしています。この女性は預かっておきますね」
「それは……」
「ご心配なく。人質という意味ではありませんし、傷つけるつもりもありません」
JP01の瞳がンドペキを捉えた。
「でも、私どもにも、少し尋問をする権利があるのではないでしょうか。数日以内には、お返しできると思います」
言うが早いか、JP01の体が宙に浮いた。
「では、私達があなた方と仲良く、この地球で暮らせますように!」
JP01は女を抱え、こちらを向いたまま、ふわふわと遠ざかり、川面を渡って帰っていった。