715 でくの坊だといわざるを得ない
それ以降、ンドペキの苦悩が始まった。
まずその第一弾。
自身の部屋の階段の前で。
レイチェルが待っていた。
彼女はまるで、ボーイフレンドの部屋を訪ねたかのように振舞った。
恋人みたいにしろとは言わないけど、もうちょっと、やさしくできないかな、などと甘えて。
それ以降のことは、枚挙に暇がない。
皆さんも、そのいくつかを目にし、耳にしたことだろう。
そして、ついに……。
それはまだ、数時間前のこと。
レイチェル騎士団がシェルターに立て篭もっている可能性が高い。
それを知りながら、レイチェルはその救出あるいは合流作戦にゴーサインを出さなかった。
それどころか、ンドペキの家族はどんな人たちだったの、今も連絡を取り合ってるの、などと言ったのです。
まるで、あなたと一緒にいたい、と言わんばかりに。
このレイチェルの一連の態度。
これが何を意味するのか、もう解説する必要もないでしょう。
あえて申し上げるなら、ンドペキはこういう面で、でくの坊だといわざるを得ません。
さすがにスジーウォンはンドペキの顔色を見たが、当の本人は黙ったまま、今度は目を閉じている。
言いすぎだとは思うが、イコマはこの点でンドペキのふがいなさ、つまり自分のふがいなさを責めないではおれなかった。
昔の自分と同じではないか、と。
「一方、街の噂に、クローンが製造されている、というものがあった。チョットマがライラから聞いてきた話です」
イコマは再び、ここで間をおいた。
これから話すことは、多分に想像を交えた話になる。
仮説どころか、脆弱な憶測でしかない。




