714 サリではなく、レイチェルとの関係に
「さて、次はンドペキに視点を移そう。サリではなく、レイチェルとの関係に」
この話の中には、実際に自分が見聞きしていないことが含まれる。
ンドペキの記憶として知っていること。
指摘する者はいないだろうが、イコマは念のため、小さな嘘をついた。
「僕はフライングアイを二つ、使えるのでね」
これは嘘ではない。どうか誤魔化されてくれ。
「ンドペキが初めてレイチェルという女性を意識したのは」
ンドペキは仏頂面をして天井を見つめている。
「例のシリー川の会談だった」
代表者レイチェルの、いわば付き人というような立場で、ンドペキは会談に臨んだ。
それは、JP01の希望、ということになっている。
それは確かなこと。
しかし、それだけだろうか。
レイチェルはなぜ、そのイレギュラーな要求を受け入れたのか。
こちらも不思議だ。
ンドペキは一兵士。
政府の要職でもなく、防衛軍の幹部でもない。
親衛隊でもない。
ハクシュウ隊の一兵士。
しかも、ハクシュウさえ差し置いて。
誰が見ても、不自然なペア。
にもかかわらず、あの日、レイチェルはこう言っている。
私はあなたを信じています。あなたがおっしゃることを、私は信じます。
会ったばかりのンドペキの手を握ったまま。
どうだろう。
会ったばかりの一兵士に向かって最高司令官が掛ける言葉として、おかしくはないか。




