695 ささやかだが、今夜は楽しもう!
その夜、洞窟ではささやかなパーティが開かれた。
チョットマは、ンドペキの心遣いがうれしかった。
ここに潜んで早やひと月と少し。
朝も昼もない暗闇の中で、薄暗い照明だけが頼りの暮らし。
いつ何時、アンドロ軍が攻めてくるかという緊張感。
消去される不安に押しつぶされそうな毎日。
溜まりに溜まったストレスを霧散させる手段もない日常。
不安要素だった消去と再生のシステムがパリサイドによって破壊され、少なくとも洞窟の外に出ることができるようになった。
隊員達の心をどれだけ浮き立たせたことか。
行動範囲が広がるだけでなく、街のアンドロへの攻撃を仕掛ける上でも、非常に大きな意味を持つ。
新しい作戦を立てることができる。
戦いに勝つ見込みが高まる。
チョットマはじめ、隊員全員が待ち望んでいたことだった。
「作戦会議はなしだ。ささやかだが、今夜は楽しもう!」
短いフレーズで、ンドペキがパーティの開会を宣言した。
「明日の作戦会議は、正午から始める。間違わないように」
そういって、たくさんのテーブルの周りに集まった隊員達の輪の中に入った。
連夜、全員での作戦会議はンドペキが必ず実行してきたこと。
話すことはそれほど多くはなかったが、顔を合わせることが重要だからと。
チョットマも賛成だった。
士気を高いままに保つだけでなく、閉塞感のある暮らしに生じがちな不都合や不安を少しでも和らげるために、様々なことが話題になった。
そこで話すことによって解決することもあったし、話すことで心が休まることもあった。
急ごしらえのテーブルが、大広間に並べられている。
料理も飲み物も、いつになくたくさん並んでいる。立食形式だ。
照明もいつもより多めで、暗さに慣れきった目には眩しいと感じるほど。
チョットマは、ンドペキが自分の近くに来てくれたことがうれしかった。
「ねえ、ンドペキ、明日から新しい暮らしが始まる、そんな気分ね」




