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692 ふたりとも、もういいって

 辛かった。


 洞窟に始めて来たときも、スゥは涙ぐんでいた。

 そして、自分の記憶がないことで、スゥを悲しませたと思っていた。


 ようやく記憶を取り戻し、スゥが、かつて最も愛した女性だったことを思い出した。

 なのに、どうなってもいい、とはどういうことなんだ!



「だって、ユウ本人がここにいるんだよ。クローンではない、本物のユウが!」

 すかさず、ユウがスゥの言葉を遮った。

「もう一度言うよ。ふたりとも、もういいって」


 それきり、スゥは黙ってしまい、また睫に涙をためた。



 ンドペキは、事の成り行きに気がついた。

 自分が誰を愛しているのか、ということに。


 さっきは、スゥを、そしてユウを愛していると言った。

 それは心の赴くままに言ったこと。


 では、現実はどうなる……。



 目の前に、ユウと同期したスゥがいて、ユウ本人がいる。


 自分はスゥを愛している。

 それはクローンからマトになったスゥ。


 しかし、スゥの存在はユウとしての存在でもある。

 しかも、洞窟を用意し、導いてくれたのは、クローンのスゥではなく、ユウの意識だった。


 そして、生駒延治としてのンドペキは、心の底から三条優を愛しているのだ。



 そんな心が、今自分の中に同居している!

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