691 やっとおまえのことを思い出したんだぞ!
「でも、もう一方の私はパリサイド。このニューキーツの街がどうなっていくか、ある程度の予測はできた。何らかの争いが起きる可能性はとても高い。ンドペキは兵士。戦いが起きれば、私が助けなくてはいけないときがくるかもしれない。そのためには、政府の監視網から逃れられる、自由で安全な場所が必要だった」
「洞窟を」
「そう。何が起きてもいいように、必死で準備したのよ」
「ありがとう。本当に」
「私はさ、ある程度は期待していた。ンドペキは私のことを忘れているけど、もしかすると思い出すかもって」
「すまない……」
「ううん。厚かましいよね、私。自分が記憶を取り戻したからって、ンドペキも同じように都合よく思い出してくれるかもって」
スゥの意識とユウの意識がめまぐるしく入れ替わる。
ユウだと思えば、次の言葉はスゥが。
ンドペキは、ンドペキとして、スゥ自身に話しかけたいと思った。
「スゥ、聞いてくれるか。俺は、ンドペキは、ユウのことを忘れていた。俺が知っているのは、今の、スゥだよ。君のことを信じていた。本当だ。だから、ああやって洞窟にやってきたし、ここに部隊を呼び寄せることに何の躊躇もなかった」
「うん。それはわかってる。でも、もうンドペキは私の知っているンドペキじゃない……。ノブだから……」
「でも、俺はンドペキなんだ。スゥがここに連れて来てくれた、東部方面攻撃隊のンドペキなんだ!」
ユウが言葉を遮った。
「ふたりとも、もういいよ」
ンドペキは思わず叫んだ。
「もういいって、なんだ! ユウ! 俺は、スゥを!」
「だから、もう」
スゥが、苦しそうに呟いた。
「ンドペキ、私のことはもういいの。私の仕事は終ったのよ」
「なんだ、仕事って!」
「ンドペキを探し出し、記憶を取り戻してもらうこと。それが私の仕事。もう、仕事は終った。私はどうなってもいいのよ」
「何を言う! やっと俺はおまえのことを思い出したんだぞ!」




