666 あなたはまだンドペキじゃないじゃない
オーエンはパリサイドを憎んでいる。
パリサイドとの共存を意図しているレイチェルに対してはどうか。
アヤは危うく死にかけた。
「大丈夫かな」
「そこが問題なのよね。ねえ、イコマさん、いい知恵ない?」
スゥは相変わらず、イコマさんと呼ぶ。あれ以来、ノブと呼んだりはしない。
「いい知恵ねえ」
特別な作戦はない。
「平凡だけど、彼女の弱点を突くとか。弱点、ないのかな」
「付き合い始めたとき調べてみたけど、これといって」
「なあ、スゥ、ンドペキって呼ばないんだね」
「どうして? あなたはまだンドペキじゃないじゃない」
自分は時としてンドペキとして考えていることがある。
しかし、スゥがいうように、まだ一体化はしていない。
それに、フライングアイにはイコマと呼んでおいた方が安全だ。
誰に聞かれるやも知れない。
もちろん、イコマがンドペキであるということは厳重に伏せられている。
その場にやってきたチョットマは気付いた可能性もあるが、何も言って来ない。きっと気付いてはいないのだろう。
「本当にややこしいよ。僕はンドペキなのかイコマなのか、だんだん曖昧になってきてる」
「完全に同一化すれば、ややこしくもなんともなくなると思うよ。回りの人にも言えるしね。今の状態で周囲の人に話したら、かなり混乱すると思う。特に今のような切迫した場面では」
「だろうな」
「アヤちゃんにもね。彼女自身も混乱するだろうし、それが周辺に漏れ出さないとも限らない」
「アヤちゃんは、そんなことをばらしたりしないよ」
「そうね。でも、精神的にはきついと思うよ。ンドペキがイコマさんだと知って、知らん振りし続けるのは。あ、そうそう。念のために言っておくけど、ンドペキはあくまでンドペキとしてアヤちゃんに接してね」
「わかってる」
なぜスゥがアヤのことを殊更に念押しするのか、奇異な感じがしたが、取り立てて聞いてみたりはしなかった。
ホトキンの間を通り過ぎた。
「大丈夫」
「どう大丈夫なんだ?」
「だって、いろいろ仄めかすだけでも十分じゃない」
「何を?」
「そう、弱点、かな。今日のところは、それでいいんじゃないかな」
「任せる。でも、ライラは絶対に要求してくるぞ」
「でしょうね」
ライラは、あのタブレットを見たのだ。
そして、何が起きたかを見ていたのであれば。
「きっと、欲しがるでしょうね」
「ああ」
「でも、私はあのタブレットの作り方を知らない。JP01からもらった。パリサイドからもらったと言えば、ライラも二の足を踏むかも」
「自分で使うんじゃなくて、売りつけるとしても?」
「彼女なら、商売にすると思う。良心に賭けるしかないわね」




