656 並外れて気難しい娘
ロクモンが声を落とす。
彼女は自分がホメムであることを、非常に強く認識しておられる。
わしは常々、そう感じており申す。
彼女が不憫でしようがござらぬ。
ホメムであることを意識するあまり、傍から見れば奇怪な行動をとることがあり申す。
兵達の中には、レイチェル閣下がニューキーツの街よりも自分のことを重要視している、と感じている者もおり申す。
しかし、それは少し違う。
レイチェル閣下はかなり苦労して、それらを両立させようとしておられる。
わしはそう考えておるのじゃ。
彼女のストレスは相当のもの。
きわめて強い精神力で、自分自身をコントロールしなければできぬこと。
ンドペキはロクモンの言うことが理解できないわけではなかった。
イコマが探偵から聞いた話も心に残っている。
伴侶を見つけ、子供を、という話だ。
ただ、ロクモンほど、レイチェルに近い存在ではない。
初めて顔を見たのも、ついひと月ほど前のことなのだ。
心情など、わかるはずもない。
レイチェル閣下は、実を言うと、並外れて気難しい娘でござる。
わしが言うのもなんでござるが、彼女がプライベートモードになって話す相手は、非常に限られておる。
将軍の中ではわし、親衛隊の中に二人、付き人でさえ数人。
政府職員の中ではただ一人。
バード殿、あ、いやアヤ殿でござるな。
わしが見るところ、あれほどの立場にありながら、親しく話しかける相手は、この世に十人もいないのではないか。
城外では、ダンスの師範とサリだけでござる。




