652 なぜ、もっと早く言ってくれなかったんだ
チョットマの部屋の前に立って、ンドペキは自分でもげんなりした。
今の話を、どう伝えればいいのか。
気にするな、おまえは必要とされている、と言えば納得するだろうか。
役目といえばそれまでだが、落ち込んでいるチョットマに掛けてやるいい言葉は思いつかない。
「ンドペキ」
振り向くと、ロクモンだった。
「話がござる」
先ほどの話の続きならごめんだ。
「今後の作戦につき、耳に入れておきたきことがござる」
ンドペキはチョットマと話をするのを後回しにして、自分の部屋にロクモンを誘った。
「レイチェル閣下から聞いているかもしれぬが」
と前置きをして、実は、とロクモンが切り出した。
「長官の居住エリアから通じている専用のシェルターがござる。そこに、レイチェル騎士団を含む親衛隊が残っているという。そんな噂、聞いておらぬか?」
初耳だった。
「レイチェル騎士団が、彼女を裏切るとは考えにくうござる。もちろん全員、マトないしメルキト」
「オールドキーツに逃れた者の中には?」
「親衛隊はもちろん、騎士団はひとりもいなかったと聞いており申す」
「そうだったのか……。なぜ、もっと早く言ってくれなかったんだ」
「てっきり、閣下がお話しされていると。それに、わしの隊のことではござらぬ。わしからおぬしに話すのは筋が違い申す」
「うむう」
「親衛隊、特に騎士団は、レイチェル閣下を絶対視している集団でござる。彼女の姿が見えなくなったからといって、閣下の居住地を捨て、己の判断でオールドキーツに退避するなど、絶対にござらぬ」
レイチェルの口から、シェルターのことは聞いたことがない。
なぜ、レイチェルは話さなかったのだ。




