645 魔法でもあると思ってたん?
「俺を見つけ出してくれた状況は、だいたいわかった。しかし、俺の、つまりイコマとしての記憶はどうやって取り戻してくれたんだ? たった今のこと」
「タブレットのこと?」
「そう」
あれは、生駒延治という人物の記憶を、海から正確に抽出するための基礎データ。
つまりフックのたくさん付いた網みたいなものね。
それに加えて、あなたの脳に埋め込まれているマイクロ装置を動かすプログラム。
そしてアギとなったノブの思考と同期させるためのプログラム。
「ちょっと待ってくれ。俺の脳に、そんな機械が入っているのか」
「当然やん! マトは本当に何にも知らないんやね」
それがあるから、脳の動きを政府のコンピュータが吸い出すことができるんじゃない。
それがあるから、監視衛星であろうが、通信傍聴システムであろうが、個人を特定できるんじゃない。
それがあるから、死んだとき、その位置に次元の扉が開くんじゃない。
「魔法でもあると思ってたん?」
「そうだったのか」
知らないことだらけだった。
ユウは少しだけ、大阪イントネーションになっていく。
ンドペキは、そんなことにも胸を震わせた。
「その装置は、出力だけじゃなく、アーカイブを作り続けてる。だから再生時に、記憶をインプットできるねん。私はそれを逆手にとって、生駒延治の記憶をあなたにインプットしたのよ」
大阪イントネーションはうれしいが、話の内容には背筋が寒くなる。
となれば、あらゆる人間の記憶や知識や感情を、入手できることになる。




