639 約束のキスを
ンドペキは立っていられなくなり、その場に座り込んだ。
意識が沸騰していた。
とめどない記憶と感傷が押し寄せてきた。
頭を抱え込んだ。
チョットマが自分の娘となり、サリの話を聞いたこと!
ピクニックと称してチョットマのバックパックに入り、東部方面攻撃隊の作戦に参加したこと!
アヤが顔を見せ、心が紅色に染まったこと!
アヤがまたしても姿を見せなくなり、その後ハワードが尋ねてきたこと!
チョットマしか頼れるものはいないと思い、ハクシュウに頼んでもらったこと!
探偵からホメムであるレイチェルの苦悩を聞かされ、心が震えたこと。
「よーく、噛み締めて」
ユウがやさしく声を掛けてくれる。
ンドペキは目を見開いて前を向こうとした。
石のテーブルが、ホトキンの間が、ユウの姿がぐらぐらと揺れていた。
目を開けていられない。
床に両手を突いて、かろうじて体を支えた。
そして、喘ぎながらも、蘇ってくる記憶に身を委ねた。
ニューキーツの広場でチョットマがピンク色の布地を買うのを見ていたこと!
チョットマとともにプリブの、そしてライラの部屋に行き、ホトキンの話を聞いたこと!
荒れ地軍の状況を上空から実況中継したこと!
「ユウ! 約束のキスをしてくれ!」
と、喘ぎ喘ぎ言ったとたん、つい先日、大阪のマンションを模したバーチャルな部屋でユウを抱いたことが甦った。




