632 今がそのときだから、私に任せてって
三人に見つめられ、ンドペキはひとり取り残されたような気分になった。
ヘッダーを取った。
顔に不安が表れていたのだろう。
JP01のかわいい口が、「スゥに任せているのよ」と動いた。
「ちょっと待ってくれ。四人で話をするんじゃなかったのか」
スゥが厳しい声を出した。
「それはもう説明した。今がそのときだから、私に任せてって」
「しかし」
「長々とおしゃべりすることが重要じゃない。大切なことは一言でも通じる」
「そうだとしても」
「……ンドペキ。じゃ、少しだけ話そうか」
「ああ、そうしてくれ」
「あなたは隊長として忙しいから、少しだけね」
タブレットを手の平に載せたまま、
「私の気持ちを、ンドペキは本当はわかっていると思うのね」と呟くように言う。
そう言われると、切なかった。
もっと切ない気持ちでいるのはスゥ、ということもわかっていた。
「それに、ンドペキは私のことを思い出したいのに、これっぽっちも思い出せない。そのことを申し訳なく思ってるでしょ」
「ん、まあな」
「正直ね。私、それだけで満足するべきなのかもしれないね。あなたが思い出すのを待ちたいけど、今の状況では、とても待てないから」
スゥの指が手の平のタブレットをいじった。
「状況は混沌としてる。あなたも私も、これからどうなるかわからない。離れ離れになるかもしれないし、最悪は死んでしまうかもしれない。あなたが私を思い出さないまま」
ンドペキにとっても、それは辛いことだった。
しかし、それでもいいと思ったりもしている。
自分は過去の誰かではなく、今のスゥが好きなのだ。
そう感じていることを知っていた。
単に申しわけないという気持ちから来るのではなく、どんな形であれ、彼女を失いたくないという思い。
だからこそ、森の中で聞き耳頭巾の布を被るという、妙なことまでしてみたのだ。




