62 ホメムとは
ホメムとは。
数百年以上前の世界戦争で生き残った男と女が、肉体的なセックスによって生まれた子供が最初の起源である。
マトにもならずアギにもならずに、その後も同様に子供を生み、育て、寿命が尽きては死んでいくサイクルの中にいる、真正の人類のことである。
その数は減少を続け、今や風前の灯といわれて久しい。
六十七人という数字は、イコマも聞いたことがある。
しかも、いずれも超後期高齢で、人類の滅亡は避けられないというのが通説だ。
だからこそ、アントワネットと記載されたホメムは何らかの方法でマトの男性と接触し、自分の子を宿したというのか。
二十数年前とはいっても、高齢の女性が?
しかも、完ぺきとは言えない生殖機能しか持たないマトと?
ありえないことではないかもしれないが……。
イコマはホメムの姿をもう数十年以上見たことがない。
ワールド暦五百年を祝う式典に姿を見せた背の曲がった老夫婦を、モニターで見たのが最後。
彼らがどこに住み、どんな暮らしをしているのか、またどういう血縁関係にあるのかないのか、なにも知らない。
彼らが「ヒト」としての、自然な血統を守り続けている人々である、ということを想像してみるだけだ。
いや、妙だ。
アントワネットが命を賭してまでマトの子を生んだのなら、その子をメルキトとするはずがない。
制度上はメルキトということになるだろうが、兵士として育てるはずがない。
確かに、現在の兵士。
実質的にメルキトとマトのみに開放されている職業。
しかし、あまりに危険で、言い方は悪いが、しかたなく就く職業である。
戦争のない世界になってからというもの、めったに襲ってこない散発的な敵の攻撃から街を防衛するのはもっぱらコンピューターとマシン、そして政府長官直属の貧弱な防衛軍に頼ることになり、一般兵士らの仕事は、いわば有用金属回収業者なのである。
推測の域を出ないが、ホメムであるアントワネットは自分の子を、ホメムとして扱うこともできるのではないか。
制度上はメルキトだとしても、記録を改竄して……。
おかしな点は他にもある。




