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618 チョットマがライラから聞いたこと

 ライラがもたらす情報は、変わり映えのしないものも多かったが、市民が不安を増幅させていることが伝わってくる。

 エリアREF、それも地下深くの住民の数が日ごとに増えている。

 スラムというより、一種の避難所のような雰囲気だ。


 街で飛び交っている噂も、徐々に具体性を帯び始めている。

 タールツーの子供が次期長官につくという噂。

 生殖機能を備えたアンドロが早速、性行為にふけっているという噂。

 子供が生まれれば多額の報奨金が支給されることになったという噂。


 そして、何体かのクローンが製造されたという噂。

 クローンが街を救うだろう、という予言めいた噂までもが、まことしやかに語られているという。



 そして市民が最も震え上がった噂。

 それは、タールツーがバックディメンションを経由して、他の街のアンドロの蜂起を画策しているというものだ。


 そもそもアンドロが人間の立ち入ることができない異次元に住み、そこが街のいわば本体であるということに、市民はようやくリアルに感じ始めたのである。


 そのバックディメンションは、六十七の街ごとに分かれて存在するのではなく、実はひとつの次元であり、アンドロはひとつの巨大な街に住んでいるという。

 もし、それが正しければ、ひとつの組織体としてのアンドロが、既に地球すべてを支配していた、ということになる。

 街に住む市民は、分断されたちっぽけな村社会の住民でしかない。

 アンドロの手の中で弄ばれる、六十七のゲージに入れられたハムスターのようなもの、だと。



 ライラは、エリアREFについても教えてくれた。

 チョットマが最も刺激を受けたのが、そこに君臨する蛇の話。


 その話は、チョットマが白い蛇を見たと話したことから始まった。


「さすがだねえ」

「何が、さすがなの」

「だって、おまえは小さな魔物ちゃんだろ」

「違うって!」

「ハハ、そうだろうとも。自分が何者かなんて、誰も気がついていないものさ」

「だから、違うんだって!」


「ここじゃ、おまえの話でもちきり」

「えっ? どんな話?」

「おまえはあの大蛇に触れた。羨ましがる者が多うて」

「大蛇? 三十センチほどの蛇だったけど……」


 チョットマは、生まれて初めて蛇という生物を見たのだと言った。


「チョットマよ。目に見えるものがその実態とは限らんぞ。どこで出会った?」



 プリブが殺されたときのことを話した。

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