610 ね、チョットマ、もうやめよう ね
「あなた、私とかなり違うよね」
収まりかけていた怒りが再燃してしまった。
「はあ? 当然でしょ! なぜ、あなたと一緒でなくちゃいけないの!」
レイチェルは、しまった、というような顔をした。
「私が、あなたと同じでなくちゃいけない理由、教えて欲しいわ!」
矛を収めなくては、と自分ではも思うが、その手順が分からない。
「あなたは街の一番偉い人。私はンドペキ隊の一隊員。違ってて当たり前でしょ!」
ンドペキはじめ、隊員たちが仲裁に入ってくれようとするが、怒りはなかなか収まらない。
レイチェルが激昂することはない。
半ば微笑みながら、あるいは威圧しながら、短い言葉をぽんぽんと投げてくる。
「ごめんなさい。言い過ぎたね」
「言い過ぎって、それじゃやっぱり、そう思ってるんじゃない!」
「ううん。少し意味が違うのよ」
「じゃ、どういう意味!」
「あなたは、私の、ぶ、っと、ね、チョットマ、もうやめよう。ね」
「あなたの部下だから、あなたと同じようにしなくちゃいけないっていうの?」
「だから、そういう意味じゃないって。ごめん、謝るから」
そんなやり取りで、毎日の恒例になった全員での夕食会をぶち壊してしまったのだった。
最後はパパが目の前を飛び回って、「二人とも、もう、やめなさい」って言ってくれたけど。
ネールが、廊下に突っ立っている。
「入って」
「えっ」
「さ」
チョットマは、我ながら大胆かな、と思ったが、ネールを部屋に入れた。
部屋といっても、ベッドと椅子がワンセットあるきり。
ロクモンの隊には女性がいなかったので、チョットマは相部屋を免れている。
「じゃ」
と、おずおずと入ってきた。
ネールに椅子を勧め、自分はベッドに腰掛けた。
「生まれて初めてだな。きっと」
「そうね。私も」
こんな風に、人の部屋に入ったり、入れたりするのは。
「あっ、違う。私はプリブの部屋に入ったんだ。ンドペキの部屋にも」
「ああ」
「でも、勘違いしないでよ。あなたを部屋に入れたからって」
「それは、こっちの台詞でもあるな」




