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609 それ、どういうこと? 今、鼻で笑ったよね
「おい、金管楽器」
金管楽器とは、新しく付けられたチョットマのあだ名である。
「また、あんたか」
部屋から顔を出すと、ネールが笑っていた。
「またって、失礼だな。様子を見に来てやったのに」
「来なくていいよ」
そう言いながら、チョットマはまんざらでもない顔をしているだろうな、と思った。
夕食時に、またレイチェルとやりあってしまったのだ。
いざこざは、他愛のないひと言がきっかけだった。
「あなた、もう少し静かにできない?」
悪ふざけが過ぎた隊員にそう言ったレイチェルは笑っていた。
「すみません!」
隊員は素直に謝ったが、
「友情を育んでいるのにね」
チョットマが呟いたひと言がレイチェルの癇に障った。
レイチェルが呟き返した。
「友情?」
チョットマにすれば、聞き捨てならない。
「レイチェル。それ、どういうこと? 今、鼻で笑ったよね」
聞き流しておけばよいものを。
そう思うが、いつものことながら、先に声を発してしまっていた。
その後の展開は、いつもどおり。
言葉の応酬。
チョットマは常に分が悪い。
レイチェルの威厳に、自分の語彙の少なさが屈服してしまう。
最終的に、互いにごめんなさいとなって収まるのだが、昨夜は最後のレイチェルのひと言が利いた。




