605 私にすべてを預けますか?
レイチェルは、それほど嬉しそうではなかった。
「今更、何をしに来たのかしら」
などという。
「そんなことを言うもんじゃない、と思います」
上官に対する言葉遣いと、友達言葉が混じってしまう。
ンドペキも興奮していた。
言い直した。
「失礼しました。我々も同席させていただきます。よろしいですね」
この点は絶対に譲れない。
もし、だめだというなら、会談を破談させてしまうつもりだ。
「もちろん。頼りにしています」
レイチェルはあっさりそう言ったが、なにか言い足りなさそうだ。
「私は口を挟みませんが、我々に不利になるような内容でしたら、そう申し上げます」
「ええ」
レイチェルはまだ、立ち上がろうとしない。
「パリサイドとの会談の時には、あなたは力強いサポート役だった」
何を言い出すのかと思ったら、そんな過去のことを言う。
「では、参りましょうか」
促したが、レイチェルが不安げな顔を見せた。
ん?
レイチェルの不安の元を突き止めておかなくてはいけない気がした。
「ロクモン将軍は、間違いなくあなたの部下ですね?」
相手の要求が何なのか、分からない段階でレイチェルが弱気だと困る。
「なにか、ご不安があるのですか? 身分証でも示させましょうか? すでにヘッダーもマスクもとっていますが」
「本人かどうか、顔を見れば分かります」
「そうですか。では?」
「ンドペキ」
「はい」
「あなたには言いにくいことですが」
「どうぞおっしゃってください」
「あなたと隊員達は、私にすべてを預けますか?」
あっ、と思った。
レイチェルは忠誠を誓えと言っている。
今までそんなことを意識したことはなかったが、兵である限り、そういうことなのだろう。
ハクシュウもこうしてレイチェルに忠誠を誓っていたのかもしれない。
「当然のことながら、攻撃隊はあなたの部下です。私は、隊長として半人前ですが」
「自分を貶めることはありません。あなたは東部方面攻撃隊の隊長として立派です。ごめんなさいね。聞いておかなければ会談はできないので。では、行きましょう」
レイチェルの顔が、見る間に引き締まった。




