593 デートというには淫靡すぎる
ンドペキはスゥと部屋を出た。
「商売柄、使ってみたいんだろうが、いくらなんでも、やりすぎ。あの子が断れないのをいいことに」
スゥが、頬を膨らませた。
「そんなに何度も文句、言わなくてもいいのに」
「しかしだな」
「はいはい。すぐに返しますって」
スゥはそう言いながら、ウキウキした足取り。
自分の部屋に戻ろうとすると、腕を取ってきた。
「ね。デートしない?」
腕を払いのけたくなった。
何を言うかと思えば、デートだと。
「ふざけるなよ」
が、スゥはたちまち真顔になった。
そして、どの部屋からも聞こえないところまで引っ張っていくと、
「まじめな話がある」と、言った。
「あなたと、何日もまともに話し合っていない。今後のことがあるから、ふたりきりで話がしたい」
すでに腕は放していた。
そういえば、スゥとふたりで真剣に話したのは、この洞窟にハクシュウ達を案内したあの時以来なかった。
そもそも、この洞窟もスゥが用意してくれたもの。
なぜそうしてくれたのか。こうなることを予測していたような口ぶりだったが、その後、このことについても詳しく話を聞いていない。
実は、まともに礼も言っていなかったかもしれない。
「わかった」
「よかった。今から、いい?」
「どこへ?」
「森」
「もう真っ暗だぞ」
洞窟内では時刻の観念がなくなりがちだったが、すでに夜の十時を回っている。
「真っ暗どころか、深夜ね。ちょっとデートというには淫靡すぎるかな」
「ややこしい言い方はやめてくれ。誰かが聞いたら誤解する」
「はいはい。でも、明日まで待てない。消去される恐れはない。それは保証する」
ンドペキは、スゥに引っ張られるようにして洞窟を出た。
怪訝そうな見張り役に、洞窟の運営について話し合ってくると言い残して。




