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584 まだ、私の話は終ってないよ
「私、あなたも愛してる」
とっ! つっ!
「驚いた? でしょうね。私さ、二重人格! ケケケッ!」
イコマに口があれば、ポカンと開けただろう。
「ごめん。ケケケッというのは嘘。ちょっとからかっただけ」
「あのさあ」
「なに? まだ、私の話は終ってないよ」
「はあ」
イコマはもうすでに疲れていた。
こういう会話には慣れていない。
アギに対して、こういう冗談を言う者はいない。
そもそも、スゥとはまともに話したことさえない。
どことなく近寄りがたい雰囲気を湛えている女性なのだ。
しかもスゥは、ンドペキにだけは常に笑顔だが、他の者に対しては無関心。
見ようによっては、ンドペキは私のもの、と主張しているようにも見える。
「私は二重人格。これは本当」
「……」
「でも、ンドペキを愛している自分と、あなたを愛している自分は一緒」
イコマは混乱した。
二重人格というなら、片方がンドペキを愛し、もう片方が他の者を愛するということではないのか。
いや、そんなことはどうでもいい。
僕を愛しているとは、どういうことなのだ。
まともに話をしたこともないのに。
それに、自分はアギ。
フライングアイの姿以外では、スゥと会ったこともない。
スゥ、大丈夫か……。




