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582 あーあ、だれも私のこと、わかってくれない
「はじめてね。あなたとふたりきりで話すのって」
唐突にそういわれて、イコマは戸惑った。
「何度でも言うけど、アヤのことは本当にありがたかった。君がいてくれて、あそこでエーエージーエスに飛び込んでくれたからこそ、アヤは助かった。感謝してもしきれないと思っている。本当にありがとう」
スゥが、大きく息を吐き出した。
「それはもういいのよ。でも、こうして話すのって、ようやくって感じ」
そして顔を近づけてきた。
「よーく見て」
まじまじとスゥの顔を見つめたが、そこにあるのは今まで目にしてきたスゥと変わるところはない。
「うーん。かなりの美人だ」
「そういうことじゃなくて」
スゥが椅子にどさりと腰を落とした。
「あーあ、だれも私のこと、わかってくれないんだ」
弱った。
スゥは明らかにいらついている。
「あの洞窟にあれだけのものを運ぶのに、どんなに大変だったか。だれも気にしてくれない」
確かに、今はさも当然のように使っている。
しかし、次から次へと難題が降りかかり、スゥに感謝を表す場面がなかったのかもしれない。
イコマは、謝った。
「ああ、だから、そんなことを言って欲しいんじゃないの」
「んー、ごめん」




