581 夜景に見覚えがあるような気が
ライラの部屋を出て、スゥがホッと息をついた。
「長いんだなあ、いつも」
「みたいだね。でも、いろいろ聞けてよかった」
「さっき、アンドロに知り合いがいる、って言ってたよね。その人の話と矛盾してなかった?」
「ああ、全然」
プリブの部屋で四時間後に待ち合わせ、と決めてある。
「少し早いけど戻ろうか」
イコマはそう言ってスゥの肩にとまったが、
「寄り道してもいいかな」と、スゥが横顔で言う。
危険なところでないなら、構わない。
「私の部屋」
「遠くない?」
「うん。ここだから」
スゥは、フフッと笑って、ライラの隣のドアノブに手を掛けた。
「えっ。なんだ!」
「隣同士」
部屋に入ると、スゥはどこかに連絡を取り始めた。
「仕事、ほったらかしにしてるから」
部屋は、地下とは思えないほど明るく、窓まである。
外には夜景が広がっている。
もちろんバーチャルだが、非常によくできている。
これは数百年ほど前の都市だ。
車や電車が走っている。
窓際に近づくと、かすかに夜の町の騒音が聞こえてきた。
「終ったわ。それ、いいでしょ」
「どこで手に入れたんだい?」
「うーん。覚えてない。かなり以前から持ってたと思うんだけど」
「どこの街?」
「さあ」
画面の中ほど、大きな川が右から左方へと流れている。
川の上を何本もの道路が渡り、左の端には高速道路だろうか、ひときわ明るいオレンジ色の照明の列。
何本もの鉄橋が川を跨ぎ、それぞれ色の異なる電車が渡っていく。
飛行機が着陸するのだろうか、高度を下げていく。
夜景に見覚えがあるような気がした。




