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57 隠された広大な別の市街

 このニューキーツの街にも、隠された広大な別の市街があるといわれている。

 一部のアギによって、ささやかれている噂。



 噂とは……。


 政府の機関が集積している建築群は、人の目には見えない、より大きな建物郡の玄関部分にしか過ぎない。

 次元の位相をかすかに変えることによって、市民は、そのエリアの存在にさえ気づくことはない。


 多くのアンドロはその次元にたやすく行き来することができる。



 もちろん、初期のアンドロを製造していたのは、ホメムである。

 しかし、ホメムの数が急速に少なくなっていった時期に、特殊なアンドロや高度な知能を持ったアンドロを数多く開発し製造した。


 ホメムやマトが住む地上ではなく、生産拠点あるいは行政拠点としての新天地を求めた時期のことである。

 地上の汚染が過去最悪だった頃のことで、宇宙空間に浮かぶ生産拠点だけではまかないきれず、膨大なエネルギーの将来性も危ぶまれたからであった。

 そのような次元にアンドロを送り込み、様々な物資の供給源として、彼ら自身の知性でその世界を運営させる必要があった。


 アンドロたちが、その新天地に、自分たちの王国を作り始めたのは必然の流れ。

 果たして、まさに桃源郷ともいえる豊かな世界を異次元に築きあげたと言われている。


 市民が住む次元は、今やアンドロによって生かされ、コントロールされている。

 中世を懐かしむための博物館のようなもの。いわば見世物。




 一部のアギが発するメッセージは、そう訴えていた。

 しかしメッセージはすぐに削除され、その人物のIDは凍結された。

 だが、そのメッセージは一部のアギの記憶に残った。




 ふとイコマは心配になった。

 アヤはその世界と紙一重のところで働いている。


 言い寄ってくるアンドロがいるという……。


 アンドロは、かつてのロボット代わりの人造人間などではなく、完全な「人」である。

 強大なコンピュータによって生かされているアギやマトより、よほど人間らしいといえるかもしれない。

 人生の輪廻を人間らしく送っているのかもしれない。



 彼らの世界は、かつて人間が御し切れなかった世界中の様々なひずみや、最大の過ちであった世界戦争がなかった場合に進化していったであろう、輝かしい未来の地球の姿、人類の姿かもしれないのだ。




「アンドロは私の仕事場にもたくさんいるよ。というか、アンドロばかり」

 アヤはそう言う。

「メルキトだってごく少数。マトなんて、ほとんどいない」

「政府機関なんだから、そうなんだろうね」

「さすがに上層部ともなるとアンドロとメルキトの勢力は拮抗してるけどね」

「アンドロの部下のメルキトやマト。微妙な気分なんじゃないかな」

「ううん。そんな意識はないんじゃないかな」


 アヤが肩をすくめた。

「アンドロだからって、奴隷じゃないし、マシンでもないから。仕事場じゃ、対等」

「うん」

「そもそも、相手の素性なんて、意識もしないし」

「へえ、もうそこまできているのか」

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