575 あいつは憎しみの化け物
ライラは、まだ話していたいようで、別の話題を持ちだした。
「あんた達は会ったのかい? オーエンに」
部屋を辞したかったが、老人の話は最後まで聞かなくてはいけない。
ライラ自身が、そう言っていた。
また怒り出されてもかなわない。
「うちの亭主も、これで生きがいができればいいんだけどね」
「会いましたよ。声だけですが」
「ハハハ、そりゃ、声だけさ。あんたと一緒で、あいつは一応、アギだからね」
一応はアギ……。
「オーエンは、あのどでかいチューブに巣食っている。あそこが離れられないんだね。まるで妖怪さ」
ライラがまた大きな声で笑った。
「きっと、念願の実験か何かをしたいんだろうよ。うちの亭主が呼ばれたってことは」
「実験?」
「よくは知らないさ。でも、どうせまた次元の扉を開発するつもりだろ」
「すでにありますよね」
「あんな陳腐なものじゃない。彼が狙ってるのは、街ごと異次元に飛ばしてしまうことができるようなやつ。しかも、人間を生かしたまま、移動させられるやつ」
「ほう!」
「そういうものを作って、何をしようとしているのか、わからないでもないけどね」
そんなものが開発できるのだろうか。
アギであるオーエンと、ホトキン二人で。
しかも、あの施設の運用が終了してから数百年が経っている。
電力もまともに供給されていないはずだ。原則的には。
ライラの話が続いている。
「あいつは憎しみの化け物」




