567 預かり賃、払って
「この先よ」
かつて防衛軍を追われた兵士が、立ち並んでいた場所。
「武器を持っていたら、通してくれないって、プリブが言ってた」
「でも、スキャナーは通路の向こう側にあるんだろ?」
「うん。あの時は向こうから来たから、そう教えてくれただけかもしれない」
「そうか。じゃ、ここでイコマさんの出番ですね」
パパが飛んでいった。
「ネール、お金、持ってる?」
「ああ。ピラミッドが買えるほどの金を持ってるぞ」
「ピラミッドって、なに?」
「自分で考えろ」
「フン、私がバカだと思ってるんでしょ」
パパが戻ってきた。
人っ子ひとりいないという。
「なんだ。肩透かしね」
スキャナーの電源も落ちているという。
「では堂々、無賃通過といこうか」
アンドロが街を支配して、あのかわいそうな兵士達の仕事はなくなってしまったのだろう。
長い階段を駆け上りカーテンを開けると、あの小さな部屋。
強烈な臭気が襲ってくる。
男が、あの時と同じようにうずくまっていた。
チョットマは、声を掛けた。
あの時、あれほど恐ろしかったことが、今は平気。
それどころか、慣れた気持ちまでするから不思議だ。
「あの、私の装備、帰りに取りに来ますから、まだ預かっておいてください」
男が、汚れきったコウモリのような手を出してきた。
「ネール、預かり賃。払って」
「いくらだ?」
「わからない。この人が満足するくらい」
「だから、それはいくらなんだ」
「自分で考えろ」




