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560 人としての感情をより多く持つようになった
なるほど、その通りかもしれない。
アンドロでありながら、治安省の長官。
人の命を牛耳ることのできる立場まで昇り詰めたのである。
ハワードが驚くべきことを口にした。
「彼女の子供が、メルキトとして、この街にいるそうです」
「え!」
「二十歳過ぎになっているはずです」
「子供が!」
アンドロは子を生むことはできない。
体の構造がそうなっていない。男も女も。
「そんな……。相手は?」
「前々長官」
「な! しかし、それは」
「ええ。もちろん秘密です。というより、噂です。真偽はわかりません」
レイチェルはタールツーはかなりな高齢だと言った。
二十過ぎの子がいるなら、いくつの時に産んだ子だろう、という疑念が浮かぶ。
例によってハワードはとうとうと説明を続けている。
「タールツーは妊娠することによって、人としての感情をより多く持つようになったのでしょう。驚いたことに自分の乳を与え、自分の手で子供を育てたというのですから」
「うーむ」
「できるはずがないと思われるでしょう。しかし、彼女はそうした。あくまで噂です」
「信じられるのか?」
「ん……、わかりません。ですが、イレギュラーなアンドロは時々いますから。皆さんが知らないだけで」




