559 自己主張の強い、権力意識まで持ったアンドロ
都合の悪いものはあくまで排除する。
強制死亡と記憶の削除という力を振りかざして。
それを異端だとは思わないアンドロが支配する街。
ニューキーツは独裁国家の道を歩み始めているのだろうか。
どんなに活気があっても、どんなに発展しようとも、そしてどんなに豊かであっても、暗く、抑圧された心が渦巻く街に。
「恐ろしいことだな」
イコマは正直な気持ちを口にしたが、ハワードはそれほどでもないようだ。
そんな感傷的な思考はない。
話題を少し変えた。
「アンドロがこの街を治める、とすれば、他の街との関係はどうなると思う?」
ハワードは、これには明快な答を持っていないようだった。
「私にはわかりません。ですが……」
ひとしきり唸ってから、予想外のことを口にした。
「私はタールツーの政治は長くは続かないと思います」
「ほう」
「ニューキーツをアンドロが支配するのを、他の街が黙って見ているはずがありません」
「戦争になるか……」
「ええ。しかし、そうなる前に……。タールツーはダメでしょう」
タールツーは先走りすぎた、という。
「それに、最近、体調も悪く、人前に姿を見せないそうです」
「他の街にもアンドロはたくさんいる。どこもアンドロなしでは動かない。同じようなことが起きるんじゃないか」
しかし、ハワードは首を横に振った。
「そうはならないと思います」
「なぜ?」
「タールツーほど、自己主張の強い、権力意識まで持ったアンドロはいないといわれています。彼女は、だからこそ治安省の長官になれたのです」




