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539 またやっちゃった……
レイチェルは立ち上がり、背を向けた。
「待って!」
まぶたに血が溜まったかもしれない、と思うくらいに腹が立っていた。
「どういう意味です? もっとはっきり言ったらどうなんです!」
振り返りざま、レイチェルは、
「いい加減にしなさい!」
フライングアイが、ふわりと二人の間に浮かんだ。
そして穏やかな声で言った。
「レイチェル。僕の娘に対して、それは言いすぎだと思いますよ。それに、少なくとも今、我々が置かれた状況下で話題にすることじゃない」
レイチェルはすでに顔を真っ赤にしていたが、何も言わずに背を向け、ぎごちない足取りで瞑想の間を出て行った。
「パパ……、またやっちゃった……」
「そうだねえ」
「どうしよう……」
「うーむ」
「私、消去されちゃう……」
「そんなことはないよ」
「でも」
「レイチェルはそこまでバカじゃないと思うよ。彼女にとって、君も命の恩人だから」
「だって、完全に怒ってたよ。鬼みたいに目も真っ赤だったし」
「大丈夫。それに、この洞窟にいる間は安全。政府のどんなシステムもここでは効果がない。通信さえ、遮断されてるんだから」
「でも、皆で街に帰れるときが来たら、私だけ消去されるかも」
「心配、しない。そんなことになれば、ンドペキもパキトポークも、みんな黙っちゃいないよ」




