538 ねちねちと、絞られるんだ!
レイチェルの顔は幾分赤みがさしている。
無表情だが、立腹しているのかもしれない。
ところが自分の表情はレイチェルには見えない。
マスクをつけ、ゴーグルをつけ、ヘッダーをかぶることが、こんなに気持ちに余裕をもたらすものだったとは。
直立したまま、何も言わないままレイチェルに対峙している。
自分の態度が、彼女には不遜に映っているかもしれない。
「ねえ、チョットマ」
「はい」
うわ、繰り返しのパターンだ。
ねちねちと、絞られるんだ!
淵から目を離すわけにはいきませんので、背中を向けてもいいでしょうか、って言ってみる?
きっと致命的に怒らせる。
「今、言ったことの意味、わかった?」
「は、えと、……いいえ」
雷が落ちるかと思ったが、レイチェルはあくまで冷静。
いや、ネチネチ作戦。
「そうなの。わからなかったのか」
「すみません」
チョットマも意地になっていた。
余計なこととはなんですか? 教えてください、なんてことは絶対に言わないぞ。
「あなたがサリと同じ隊の兵士になるとは、思ってもみなかった」
レイチェルが気になることを言った。
「あの、どういうことでしょうか」
サリも私も、ハクシュウやンドペキがスカウトしてくれたのだ。
レイチェルになんの関係がある?
「あなた達ふたりとも兵士になった。それはそれでよかった。でも、別の隊にスカウトされるのが理想だったのよ」
「はあ……」
よくわからない。
すでに、チョットマはかなり不愉快になっていた。
そんなことを言われる筋合いはない。
しかも、そのどこが余計なことだというのだ。
会議室で感じたのと同じような怒りが沸き始めている。
そしてその怒りは、レイチェルの次の言葉で一気に膨れ上がった。
「サリもあなたも、同じ人を好きになってしまった」
「はあ?」
「だからあなたは、さっき言ったようにすばらしい隊員として生きて。余計なことは考えずに」
「はあああ?」




