535 説明しようとすると、嘘になる
「私……」
「無理に言わなくてもいいんだよ。説明しようとすると、嘘になることもある。言葉では表せないこともたくさんあるからね」
「うん」
「整理ができたら、僕にも話しておくれ」
「うん」
彼が好きです、と言ってしまったようなものだったが、あえて否定しようとは思わなかった。
その代わり、自分に正直に、今の気持ちを伝えよう。
「たぶん、そうなんだろうと思う」
そして、わかった。
レイチェルが気にくわないのも。
スゥを好きになれないのも。
それが原因。
パパにわかったということは、他の隊員達もわかっているかもしれない。
きっと、ンドペキにも。
スジーウォンにも。
コリネルスは絶対だ。
チョットマの顔はますます火照った。
そして、やはり思い出す。
サリはンドペキが好きだったのだ。
ンドペキの方も。
今にして思えば、そんなシーンがたくさんあったように思う。
サリはンドペキの前では、変だった。
あの聡明なサリが、ンドペキの前ではしおれた花のように。
あれは、サリの乙女心が知性も理性もぐらぐらに揺すっていたからでは。
ンドペキは、幾度となくサリを狩に誘っていた。
私も誘われることはあったが、サリの方がずっと多かった。
そんなことを思い出してしまうことこそが、ンドペキに恋をし、サリに嫉妬している証拠だと思った。
チョットマは、黒い淵を見ながら、ンドペキやレイチェルや、スゥやサリのことをくどくどと考え続けた。
パパは退屈したのか、あるいはじっくり考えさせてくれているのか、山積みになった物資の間に入って、見て回っている。
ん?
足音がする。
あれ?
交替時間にはまだ早いけど。
「あ」




