534 ンドペキなんか
思ってもみなかったことを指摘されて、面食らった。
「妬いてる? 私が?」
「違う?」
「んー、わからない。誰に?」
「自分の心なんて、よくわからないものさ。でも、時には自分の心の中をよーく覗き込んでみることだよ」
「うん……」
とは応えたものの、チョットマは「ンドペキなんか」と呟いた。
しかし、わかっている。
自分はンドペキを、本当に好きになっているのかもしれないということを。
今は、完全武装。顔色をパパに悟られることはない。
妬いている、という言葉をパパから投げられた瞬間から、顔が火照っていた。
こんな感触は初めての経験だった。
もしかすると、恋をしてる?
今までは、そうだと「思ってみる」という程度だったのに。
そう考えただけで、顔に血が上った。
今、ンドペキは自らも洞窟の入り口で見張りの番についている。
会いに行きたい?
行けば叱られる。持ち場を離れるなと。
でも、叱った後で、どんな言葉を掛けてくれるだろう。
自分にそう問いかけてみるだけで、胸が騒いだ。
「心の中に、何か見えたかい?」
パパには見えているのね。
私の心の中が。
しかしチョットマは、「ううん」と首を横に振った。
「そうか」
パパは言ったが、チョットマは別の意味でドキドキした。
パパに対して、いや、誰に対しても、始めて嘘をついた気がした。




