527 街に帰ったときに取り返してきますね
伝えるべきことを思い出した。
「私、あの、聞き耳頭巾? の布を買いました」
「えっ」
チョットマは市場であった出来事を話した。
「それを、パパは聞き耳頭巾の布だって」
アヤは目を見開いていた。
「ホトキンの奥さんに渡してしまったんですけど、街に帰ったときに取り返してきますね」
「ありが、とう、ご、ざいます!」
アヤがいうに、その布は自分の部屋に厳重にしまい込んでいたという。
エーエージーエスに囚われてから、誰かの手によって持ち出されたのだろう。
そしてその日のうちに、あの布地屋の女将の手に渡ったことになる。
「ひどいことをしますよね」
「あの、あの布、すごい力ですね!」
アヤが笑った。
「私、フード代わりにしたんですけど、まあ、それはそれは、いろんな声が聞こえて、大変でした!」
アヤの顔に喜びが広がった。
「いいえ、すごいのはあなた、じゃないかな。あれを被ったからといって、誰もが、いろいろな声を聞ける、というものではないから」
ジルが、不安そうな顔を向けた。
そろそろ、面会時間終了か。
しかし、アヤの言葉は続く。
「私なんか、半年、かかってやっと、鳥の声の意味、時々わかる、っていう、程度だった、から」
「へえ、そうなんですか」
「ねえ、チョットマ。あなた、もしかすると、とても、すごい人かも」
褒めてくれているようだが、チョットマは照れくさいだけで、あまりうれしくはなかった。
実感がなかった。
チョットマはアヤに、隊が置かれている状況を説明しようとした。
ジルが、あからさまに、もうちょっとそれは、という顔をした。
アヤも、もっと楽しい話をしたいと言った。




