523 熱くならずにいこうぜ
反応したのは、パパだった。
「本来は私が行きたいところだが、残念ながらフライングアイでは書簡を持っていけない。差し出がましいようだが、ここは洞窟に一旦戻って、作戦を練り直すのがいいのではないでしょうか。南軍がそのまま街に帰ってしまうとは考えられない。きっと、このあたりに展開したままでしょうから」
その通りだ。
北軍の姿が消えた理由がはっきりしないまま、この地域を立ち去るはずがない。
それに、レイチェルが洞窟に居ることを知っているに違いない。
「うむむむむぅ」
ンドペキが唸っていたが、コリネルスがパパの案を推した。
「その通りだと思う。ここはむやみに危険を冒すところではない」
歯軋りが聞こえそうなほどンドペキの近くにいて、彼から発せられる怒りがひしひしと伝わってきた。
「熱くならずにいこうぜ」
パパに同調して、スジーウォンもンドペキを促している。
「うむう」
ンドペキもようやく納得したようだ。
ホッとした。
ここで誰かが犠牲になることだけは避けたかった。
ンドペキはもちろん、パキトポークもスジーウォンも、隊員のだれも。
隊列は、後方に警戒怠りなく、ゆっくりと洞窟に向かった。
「北軍の消えた辺りを探索します。彼らが消去されたのか、どこかに隠れているのか、突き止めなくてはいけません」
「よろしく頼みます」
パパにそう応えたンドペキの声は、すでに落ち着きを取り戻していた。




