515 さっきの任務は白紙だ!
洞窟の南東百五十キロ付近、グリーンフィールド地方を流れる中規模河川を挟んで、二軍が南北に分かれて睨み合っている。
「北軍、兵数約二百。南軍約百。装備は似通っていますが、南軍は旗指物をつけています」
「旗指物とは?」
「敵味方が混乱しないように、全員が背に旗をつけます。古い日本の戦のしきたりです」
「で、どちらが我が味方だ?」
「まだわかりません! 旗先物には、ピンク色のハートが描かれています。今のところ、情報はそこまでです。今から、まず北軍に近づき、当初の予定通り、面会を申し込みます」
「待ちなさい!」
レイチェルが叫んだ。
「南軍に! きっと南軍が正規軍!」
「南軍!」
ピンクのハートマーク!
そんなものは正規軍の印にない。
疑問を無視して、レイチェルが勢い込んでいる。
「旗指物って、日本のものということですね! 我が軍には元日本人がいます。ロクモン将軍! それに」
レイチェルが言いよどんだ。
「ピンクのハート。いつも私がちょっとした書類やメモにサインするときに、ちょこっと」
ンドペキは叫んだ。
「イコマさん! 南軍に! レイチェルの言葉を伝えて欲しい!」
レイチェルに断って、書簡の封を破り、イコマに見せた。
なるほど、サインの後ろに小さなピンクのハートマークが。
「私が本物だとわかるように」
レイチェルが照れた。
「コリネルス、チョットマ! 聞いてのとおりだ! 状況が変わった! さっきの任務は白紙だ!」




